三話 名無し
更新遅れて申し訳ありませんでした…
全て「戦場1」が悪いのです!
…嘘です、ごめんなさいm(_ _)m
少女がこちらに向かうと言ってから彼方の下にたどり着く迄、実際にはほんの数分しかかからなかったが、彼方はその数分を無限のように思えた。
1分1秒がまるで数十年の月日のように、彼方は文字通り一日千秋の想いを体現したのであった。
そしてとうとう彼方の目の前に姿を現した少女はまるで天から舞い降りる天女のように、いやまさに彼方からすれば少女は天女であるように見えた。
「ああ・・・」
そんな感嘆の声を思わず上げてしまう彼方。
そんな自分を見上げる少年を少女は嬉しそうに空から見つめていた。
「また会えたね、おにーさん。」
そう言って彼方の目線の高さまで降りてきて、待ちきれなかった彼方が少女に声を掛けようとする。
「あっ、あの君は…」
だがその言葉を彼方が紡ぎ終わるより早く、少女はこう言った。
「ちょっとお兄さんに付き合ってほしい場所があるの」
言い終わると先程とは打って変わって今度は優しくて生温い風が彼方を包み込む。
その風は目の前にいた少女をも包み込み、そのまま空中で景色が少しづつ移動していったかと思うと、急に速度を上げ空からの町並みは絵具を全色不均一に混ぜたような色味になる。
だがこんなに速く移動しているというのに酔いは一切感じられなかった、そう思ったのはその風の乗り物のような物が地上に降りてしばらくたった後のことだった。
移動中の彼方はまさに絵に描いたように放心状態だった。
あの少女の呼びかけでさえ、答えられるようになるまで多少の時間を要した。
「おにーさん、おにさーん、おーい聞こえてるー?んー、ちょっとだけスピード出しすぎたかなぁ…」
彼方は隣で顔面蒼白である。が、しかし徐々に顔の赤みを取り戻していくといきなり叫び声をあげた。
「うわあああああああ!!!!!」
もう何が何だかわからない、いつの間にか少女は自分の横にいるし地上に降りている、だが一番彼方を驚かせたのは、今いる場所があの河原だったからだ。
またもや自分の身に起きた不可思議過ぎる謎に頭を抱えていると、
「いろいろ腑に落ちないようならあたしから説明するよ」
と、隣から声がした。
その声を聞いて少女の存在を思い出し、今度は歓喜の声を上げる。空囲彼方は忙しい人種なのだ。
それを思ったか少女は彼方の反応を気にせずして話を続ける。
「まずまた会えてうれしいよ、おにーさん。えーっとまずは何から話すべきかな、色々ごっちゃになって難しいんだけど…、んーと、じゃあ空を飛んだ現象から話をしようか」
そう言うと少女は話を始めた。
「最初に。おにーさんに空を飛ばせたのはあたし。だから現象っていう言い回しは少しおかしいのかもしれないけれど。でもこれはさっきも言ったよね?」
興奮しつつ話を聞いていたが、こうもぶっ飛んだ問いかけをされると逆に頭が冷えてくる。
だが冷めやらぬうちに少女は話を続ける。
「それで、えっと、あたしが何でおにーさんを飛ばせたのかっていう話になってくるよね。もしくは何で飛ばせるのか、かな?まあ、どっちでもいいから前者から話すと、」
「待って!」
流暢に、かつ確実に言葉を紡いでいく少女の声を遮ったのは他でもなく彼方だった。
「んーと、どうしたの?」
少女は急に待てと言い放った少年が何をもって叫んだのか気になっている様子だ。
すると目一杯息を吸い込んで、
「僕が、僕が一番最初に聞きたいのは君の名前だ!」
今までの出来事の中で一番気になっていたことを聞いた、いや叫んだ。
彼方は少女の名前を知りたかった。
別に怒っていたわけではない。ただ、この少女に言葉が届くかどうか不安だったのだ。
だがその心配も杞憂に終わる。
「アハハハハ!そっか、あたしの名前か、そっかぁ名前…」
少女は綺麗に笑いながら、しかし「名前」と口にする度、表情とは裏腹に少女の声のトーンは下がっていく。
そんな複雑そうな心境の少女を見て心配した彼方が思わず声を掛ける。
「どうしたの?もしかして思い出せないとか…?」
、少女は少し悩んだようなそぶりをした後、綺麗な白い手足を空に向けて思い切り伸びをし、彼方に申し訳なさそうな笑みを浮かべながら、
「あたし、名前無いんだ」
と、呟くような声でそう漏らした。
「え!?そんな、名前が無いなんてあるはずがっ…」
彼方は驚き、当然の疑問を口にしようとして思わず息を止めた。
少女と出会った日に抱いた疑問を思い出したのだ。
「あの少女は人では無いのではないか?」という疑問を。
今まで何故忘れていたのかも思い出せない。そもそも考えてみれば、姿を消すことに始まり、空を飛ばせたり、空を飛んで来たり、到底人間では成し得ないことばかりだ。
いやいやしかしこれは夢であるはずで…、と思考を巡らせている彼方に少女はこう告げる。
「多分おにーさんの想像はほとんど当たってると思う」
と。
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