一話 不思議な少女
初投稿。
不束者ですがよろしくお願い致します_(._.)_
ちなみに私も現実嫌い。
ああ、綺麗な夕暮れだ。
太陽付近の空は朱色に染まっていて、視線を移動させると徐々に紫になってゆきそしてまた青に戻る。
反対側では今しがた目覚めた月が太陽に、後は任せてと見送る。
その幻想的な月と太陽の間に挟まれた自分はなんて幸福なんだろう、夢見がちな少年「空囲彼方」はそう思った。
この現実と非現実の境目のような時間は現代では黄昏、マジックアワーなどとお洒落な名前が付けられているらしいが、そのお洒落さが彼方は嫌いだ。
理由は「名前に現実感があるから」それだけ。でも彼が嫌いになる理由はそれだけで十分だった。
「誰そ彼時、彼たそ時、逢魔ヶ刻、日本にはこんなに綺麗で不気味な言葉が沢山あるのになんで流行らないんだろ、現実と非現実が交ざりあってる感じがすげー良いのに」
彼方は誰そ彼時を迎えた河原で空を見上げながらそう呟く。
それは空へと向かって霧散していくかと思われる程空しいものであったが、それはある少女によって霧となって散る前に受け止められた。
「あなたは現実が嫌いなの?」
「え?なに?!」
ふと背後から掛けられた声に言葉の意味も解らず一種の条件反射で後ろを振り向きながら言葉を返す。
そこに居たのは先程の彼方と同じように誰そ彼時の空を見つめる少女だった。
14、5歳くらいだろうか、身長は少なく見積もっても彼方より20cm以上は小さい。
彼方も身長は大きい方ではなく、去年の身体測定の時は170cmくらいだったはずだ。
それにまず目を引いたのはその髪。
色は真白で腰辺りまで伸びており、もうあと数分の寿命しかない太陽の陽を受け朱く染まっていて、まるで空のようだ。
目鼻立ちは幼いが整った顔立ちに髪同様色白の肌がよく合っている。
何よりその大きな瞳は彼方の大好きな夕暮れの色をしていた。
青と言えばいいのか、赤と言えばいいのか、はたまた紫が最も近い色なのか、どれも近いようで遠く、言うなれば本当に空色の瞳をしていた。
その顔、主に瞳に見蕩れていると少女は不思議そうな顔をして、
「私の質問聞いてた?」
と首を傾げて声を掛けてきた。改めて聞くと声も可愛らしいし、傾げる動作も好みだ。
すると彼方の頭にとある突拍子もない疑問が浮かび上がった。
だが目の前の少女はそれを思考する暇を与えてはくれない。
先程から質問に答えない彼方を純粋そうな瞳で見つめているのだ。
視線に耐えられなくなって自分の右後ろに立っている彼女の視線を前髪で遮りながら口を開く。
「えっと、現実が好きか嫌いか、だっけ?」
質問内容を質問する彼方を相も変わらず蔑む彼女は再び目線を空へと戻し、
「そう、いや何方かと言えば嫌いかどうかだけどね。お兄さんは、どっち?」
淡々と言葉を紡ぐ少女の声に耳を傾けながら質問の内容を心の中で復唱する。
「現実が嫌いか」彼方は思考するまでもなかった。
「嫌いだね」
余りにも早く嫌いだという結論を導いた彼方に少女は少し驚きながらも考える。
この少年はいとも簡単に嫌いと言い切って見せ、しかも口調も少し憂いを感じさせられた。
高校の制服姿なのできっと帰宅途中なのだろう、夕陽で白いシャツが朱色に染まっている。
こちらを流し目で見つめている顔は平均値と言ったところだ。
髪は黒く長髪で、朝セットしたであろうアシンメトリーの髪型は崩れかかっており、左の耳にだけ髪を掛けて黒いピアスが陽を反射している。専らどこにでもいそうなチャラい高校生だ。
彼は催促した少女が何時まで経っても言葉を返さないことを疑問に思っている様子だ。
それを感じ取った少女はこう告げる。
「現実が嫌い、私と同じ。なら一緒に現実逃避をしよう」
彼女は彼方を憂う様な瞳で見つめながら、正反対の嬉しそうな口調で。
少女が初めて笑った丁度その時、太陽は深い眠りについた。
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