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おまけ「出世の苦悩」

おまけ①【出世の苦悩】














 「叶南!何処に行った!」

 「・・・・・・」

 時咲たちの退任により、参謀に就任した叶南だったが、決して楽なものではなかった。

 毎日のように貴氏と二人で、しかも個室で話しあいをするのだ。

 副責任者の選別も勿論しているが、北と南の監獄支部長の適任者や、それ以外にも、毎日行われている裁判を見て、あの人はこうだのああじゃないだのと、一人一人、きちんと調べることから始まったのだ。

 そんな仕事の毎日に、叶南は耐えられなくなっていた。

 「まったく困っちゃうよね。どうして俺がそんな面倒なことしなくちゃいけないのかな?だって俺、たかが参謀だよ?副責任者にしても支部長にしても、貴氏が勝手に決めちゃえば良いと思うんだよね」

 「・・・で、何しに来たんだ」

 逃避のために訪れたのは、紅蓮たちの部屋だった。

 だが、渋沢は裁判中で、隼人は昨日渋沢の仕事を手伝っていたとかで、部屋でぐうすか寝ているようで、叶南を迎え入れたのは紅蓮だった。

 上司が来たからと言って、紅蓮は特にもてなすこともせず、マイペースにコーヒーを飲みながらゆっくり休んでいた。

 「これこれ」

 「?」

 叶南が何かの書類を紅蓮に手渡した。

 それを受け取ると、紅蓮はぺらっと捲った瞬間、叶南に投げつけた。

 綺麗に顔面にクリーンヒットした書類に、叶南は鼻を押さえていた。

 「折角俺が作ったのにー。あれ?貴氏だったかな?まあいいか」

 「なんだそれは」

 「貴氏がねー、紅蓮がいいんじゃないかって言っててさー。いや、俺は止めたよ?紅蓮に頼んだけど無理だったよーってね。けどさー、紅蓮は最高裁判所の裁判長でもあるわけで、誰からも文句は出ないわけだよ」

 「断ったはずだ」

 「えー。これで貴氏のところ帰ったら、貴氏の寝顔に落書きしたのと合わせて、物凄く怒られるじゃん」

 「相変わらず子供みたいなことをしてるな」

 上手く描けたんだよ、なんてどうでも良い情報を笑いながら話す。

 やっぱりダメだったかと、叶南は唇を尖らせて拗ねて見せる。

 「紅蓮の周りにいねぇの?こいつならまあなんとかなるかな、って具合の奴」

 「適当だな」

 「もーいいんだよ。俺ぁ貴氏と二人っきりの空間なんてもう無理なんだよ。だから俺を助けると思って誰かいねぇか?」

 「・・・そうは言ってもな」

 「諦めてさっさと帰りな」

 「なんだよ隼人。お前冷てぇな」

 ふああああ、と大きな欠伸をしながら、隼人が起きてきた。

 冷蔵庫を開けてコーラを取り出すと、ごくごく飲みながらいつものようにソファに座る。

 足を組んでコーラを三分の一くらい飲んだところで、コーラをテーブルに置いた。

 「人員不足なのは、何も上だけじゃねえってこったよ。紅蓮まで行っちまったら、誰が裁判長やるんだよ。それに、他の裁判所でもどんどん人が辞めて行って、あっちこっちで足りねえって言ってんのに」

 「なら、隼人も聖も、現役になればいいだけの話だろ?いいか?」

 ズビシ、と叶南に人差し指をさすと、隼人は目を細めてこう言った。

 「何があっても何を言われても、俺は今のこの立ち位置からずれる気はねぇ」

 「・・・はあ」

 最初から無理だとは分かっていたが、こうも頑なだと、何にも言えない。

 「なら諦めるとするよ。けどな、もし新しい支部長が決まって、そいつがお前たちと多少そりが合わないとしても、俺はそこに関しては口出しは出来ねえからな」

 嘘でも冗談でもなく、今後有り得る話だ。

 不正をしているとか、過ちを犯したのであれば、上から圧力をかけられるかもしれないが、個人的なことに関してはまず無理だ。

 貴氏にダメだったと言う為、叶南はドアノブを回した。

 「たっだいまー!!!」

 その時、タイミングよく渋沢が帰ってきて、ドアを勢いよく引いたため、叶南はそのまま前のめりに転んでしまった。

 渋沢はひょいっと避けて、あちゃー、と口元に手を当てて転んだ叶南を眺める。

 「こんなところにいたのか」

 「あ、貴氏」

 顔だけをあげた叶南の視線の先には、まだ落書きがうっすら残っている貴氏がいた。

 それを見てまた笑いだした叶南の首根っこを掴むと、貴氏は叶南を連れて行った。

 同情の目を向けた紅蓮たちは、静かにドアを閉めるのだった。




 「貴氏、それなんのキャラ?」

 「・・・お前が描いたんだろう」


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