第一話 人を捨てた魔法使い
東方二次創作に憧れて書きました
ある日、幻想郷が滅びかけた。
その時、幻想郷を救ったのは一人の巫女だった。
昼間は多くの人で賑わう人里、深夜、その裏道を異形なるものが駆けている。
上半身は人間の女のようであり、下半身は大蛇のような形をしていた。
「ハァハァハァハァ」
妖怪はとても焦っていた。それは何かから逃げているかのように見える。
「ハァハァ……ッ!?」
妖怪は足を止めた。前方の暗闇からとても嫌な気配を感じたからである。
その気配の主はゆっくりと暗闇の中から現れた。
「なんだ?鬼ごっこは終わりかな?まったく張り合いもなくてつまらないぜ」
現れたのは白黒の衣服に黒く大きな帽子、金色の頭髪、魔女のような姿の女だ。
しかしその右腕は明らかに人のものとは思えない。その右腕は鋼鉄でできていた。
鋼鉄の腕が月明かりを反射してキラキラと光っている。妖怪はそんな女の姿に恐怖を抱いていた。
「ヒイィ!!!霧雨魔理沙ァァァ……」
霧雨魔理沙と呼ばれた白黒女はゆっくりと妖怪に近付いてくる。
妖怪は恐れていた、奴は確実に自分を殺す!殺される!死にたくない死にたくない。
妖怪最終的には考る事をやめた。
そして。
奇声とともに女に向かって襲い掛かっていった。その瞬間。
妖怪の体は粉微塵に吹き飛ばされた。
断末魔をあげる時間さえ妖怪にはなかった。
妖怪を始末した女、霧雨魔理沙はおもむろに胸ポケットからタバコを取り出して吸い始めた。
「ふぅぅ……本当につまらないな…霊夢………お前がいてくれば…………なんてな」
「……………い!!」
遠くから人の声がした。
「おーーーーい!!」
妖怪が来た方を見ていると紅白の巫女装束を着た少女が走ってきている。
「母さん!!」
紅白の少女は魔理沙に駆け寄ってきた。
「舞織!?なんでお前こんなとこに!?」
「ごめんなさい……母さんの役に立てないかと思ってついてきちゃった」
舞織は申し訳なさそうに魔理沙を見つめている。魔理沙はため息をついて舞織の頭を優しく撫でた。
「今度からは、ちゃんと私に言えよ、な?」
「……うん」
「頼んだぜ〝博麗の巫女〟」
魔理沙は娘を寝かしつけ自室で一人ホウキの手入れをしていた。
背後に気配を感じた。
「隠れてないで出てきたらどうだ紫?」
魔理沙が呼び掛けると何もなかった空間が割かれそこから女が顔を出した。
「あら?バレてましたの?」
「バレバレだぜ」
魔理沙は呆れたように紫の方へ顔をやる。
「久しぶりだな。何のようだぜ?私は今忙しいんだがな」
あからさまに嫌そうな顔をしながら魔理沙はこの女性八雲紫を一瞥する。そもそも魔理沙は昔から紫が苦手……というか好きではなかった。会うたびに笑顔を見せる彼女だがその胸中にはどす黒いものがあると思っていた。幻想郷の殆どの住人は皆、そう思っているだろう。人間なら特にだ、彼女八雲紫は妖怪の賢者である人間からは警戒されるのは当たり前と言えば当たり前であった。
しかし、ある一人の人間は彼女を信頼していた。もう何年も前にいなくなってしまったが…。
「どうしたの魔理沙?」
ふと紫に声をかけられ魔理沙は我にかえった。
「……すまんなんでもない」
紫は笑みを浮かべた。しかし、その笑みには少し寂しさのようなものが見える。
「あれから60年もたつのね…」
「………」
「あの娘が…霊夢がいなくなって…もう60年ね……そして、貴女が人をやめて60年にもなるわね」
「…………」
60年前、この幻想郷の結界に大きな亀裂ができた。
原因は不明、何時、誰がやったのかも不明。
その亀裂は突如として現れ、そして、その亀裂から謎の瘴気が溢れだしていた。幻想郷の管理者である博麗の巫女と妖怪の賢者は、この異変の解決へ向かった。そのあとを追い一人の魔法使いの少女も異変を解決すべく亀裂へと向かった。しかし状況は最悪だった。亀裂から発生した瘴気に飲み込まれ周りの動物や木々が死に絶えていた。人間である巫女や魔法使いでは生身で瘴気にあてられたら動植物同様に命を落とすだろう。その為巫女が防御結界を体に纏い亀裂へと向かった。
調査の結果、亀裂を消す事はできなかった。
打つ手がない。巫女と魔法使いが諦めかけた時、妖怪の賢者がある一つの方法を提示した。幻想郷を守るにはこの方法しかないと賢者が言った方法は〝博麗の巫女を生け贄として幻想郷を救う〟という方法だった。
正確には結界内で亀裂と亀裂を繋ぐ役割だ。そうすることで亀裂はふさがり瘴気の蔓延も防げる。
が、しかしその場合生け贄となる博麗の巫女は死ぬことになる。
それを理解した上で博麗の巫女は二つ返事でこの役割を了承した。
自分一人の命で幻想郷を救えるなら………。
彼女には、強い意志があった。
その夜、魔法使いには事を知らせずに巫女は生け贄になるため結界へ向かった。
しかし魔法使いは巫女の行動に気付き巫女を止めに行った。その際、魔法使いは瘴気による影響で右腕を失ってしまった。
必死に止めた魔法使いの思いもむなしく巫女は生け贄となり結界の崩壊は止まり幻想郷は救われた。
その後、魔法使いは人をやめ魔女になった。
親友が命にかえて守った幻想郷を守り続けるために。
「舞織……大きくなったわね…」
「年寄りの思い出話なんて聞く気はないぜ?さっさと本題を言ってもらおうか?」
紫は表情を変えた。先程までの雰囲気とは違う。その顔は真剣な表情をしていた。
「最近スペルカードルールを無視して暴走する妖怪が増えているわ。今まで暴れた妖怪たちは幻想郷へ来て日が浅い妖怪ばかりだけれど少々度が過ぎた事をしている。なのでその対処と現博麗の巫女である彼女の育成をお願いするわ」
「まあ確かに最近の妖怪達はマナーがなってねぇ奴等が増えているな。舞織の修行も視野にいれてるが……アイツはまだ14だぜ」
「年齢は関係ないわ。少なくともこの幻想郷ではね……あの娘を貴女が拾ってきて14年ね本当に大きくなったわ彼女には才がある霊夢を超えるというのは無理かもしれない、けれど私は彼女の内に秘めた能力に期待しているわ、それは貴女もでしょう?」
「わかった……でも私は博麗の術に関して教えられる事はないからそれは任して良いな」
紫はコクりと頷くと隙間を開き神社をあとにした。
紫と話終えた魔理沙は神社の裏に来ていた。そこには石で造られた貧相な墓があった。
魔理沙はその墓の前に座り込んで持ってきた酒を墓石にかけた。
「旨いか?旨いだろうな私一押しの酒なんだから………紫に巫女の育成とか頼まれちまったよ、ハハハ。
この腕、河童に作ってもらったこの腕も今じゃ案外気に入ってるんだぜ………。
………舞織、あの娘はいい子だよ親馬鹿なんかじゃないぜ?先代のお前に似ないで正直で良い巫女さ。見せてやりたいよ私の自慢の娘をお前にさ………」
星空の下、魔理沙は親友と酒を飲み交わしていた。
「母さん」
後ろから声がした魔理沙が振り向くと舞織がこちらを見ていた。
「起きてたのか?」
「うん。なんか寝れなくて」
「そうか」
「先代様とお話?」
「そうだよ」
「何を話していたの?」
「舞織の事さ……さっ夜は冷える部屋に戻ろう。今日は一緒に寝ようか」
「うん」
ーー星空の下、幸せな親子の姿がそこにはあった。
「私が守るよ、お前が守ったこの世界を………この娘と一緒にさ…………」
ずっと構想していたものですが自分の文章力の無さェェェェ