第止回『考想1』
ヤキモチを超えたら嫉妬。嫉妬を超えたら殺意。殺意を超えたら殺人。殺人を超えたら地獄。地獄を超えたら地獄。
受け取り屋からの朗報を聞いてから、1日が経過した。
正直俺は寝起きは良くないので、布団の中にゴロゴロと居続ける。
そうやっているとやはり何かを考えてしまいたくなるものだ。
良く言えば自論作成。悪く言えばただの言い訳。
昔、変な奴がいた。
そいつはどこにもいそうで、そしていない。そんなやつだった。
そいつは、
『あなたにとって個性とはなんですか?』
と聞いてきたのだ。
この質問においての『個性』は、多分内面的なものを指しているのだろう。
外面、外見や面ではなく。
内面、内側や仮面を問いているのだろう。
そんなことは、例え考えたところで結末はない。
残酷な結末
滑稽な人生
貧弱な肉体
脆弱な精神
最悪な接触
それでしかない。
だが、それだからと言って考えない俺ではない。
『外面の個性』は、記号でしかない。
AをAと言うための記号。必要な素材。それでしかないのだ。
ただ、『内面の個性』ということにおいては、違う。
表面が石でも中身が泥というように、表面と内面は全く違う素材だ。
いや、同じ素材ではあるのだけれども、表面の素材は環境に合わせたものに変化していて、見ただけではわからない。といった感じかもしれない。
ただ、内面まで、中身まで表面のような都合のいいものにはならない。
きわめて変化しない。変形しない。
性格というのは不明確。本性というのは明確。
俺にとって個性というのは本心であると思う。
個性は変わらない物。
だから個性というのは本心だと思う。
まあ、そう言ってしまうと『外面の個性』というのは存在しなくなってしまうのだが。
「やっぱ・・・まだまだだな」
と、布団の中でぼそりとつぶやく。
実に起承転結がなく。実に固まっていない自論になってしまった。
「やっぱり、あいつの自論には敵わないな」
言わば、空想論に近い理論。
絵空事のような現実。
あいつの自論はそれほどまでに『強力』だった。
異質や罵詈雑言というわけではない。『強力』だった。
「人の精神を破壊するよな。やつの考えは」
実際、俺もそれのせいで大きく影響を受けた。
それのせいでたくさんの人間が死んだ。
それは無常で非常で通常で
虚像で実像で
実態の知れぬ、《概念破壊》の力だった。
《概念破壊》
《ソロ・エンド》のリーダーであるやつは。
人の秩序という固定概念をも破壊してしまった。
ある意味、そのおかげもあり、秩序はより強化され、被害は大きかったものの、世界をどん底に叩き落とした後、たたき起こした軍団として、世界を震撼させた。
結局、今も存在は分からず。
『影』でも話の肴としてよく働いてくれている。
「やつにもう一度会いたい」
やつは最後にまだ若かった俺にこう言った。
『偶然が重なったら・・・・いや、もう会わないだろう』
と言い残し消えた。
「わかんねーな」
太陽は西に傾いていた。