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断罪屋『裁島』  作者: 夕夜鶴
第一章『サバキサバキ~断罪屋と殺し屋』
2/11

第一回『ヤマイヤマイ』

偶然の偶然は必然 

必然の必然は絶対


心というのは実に曖昧なものだと俺は思う。

心というのは魂つまりは命と相成るものだと考える者もいるかもしれないけれども、

それ以上の考えを見出そうとするものは相当いないものである。

心はどんなものか?

答えられるものなどいるはずもなく、いたとしてもそれは単なる自論に過ぎず、ただの妄想に過ぎない。

実際のところ心は見えないのだから、心という存在そのものが曖昧なのだ。

そんなものを信じ、人を愛するなどというものは馬鹿にすぎず、脆弱なものなのだ。

『人』という漢字は支えあっているなんて言うけれども、

上の字が下の字に乗っているというように私は見える。

そんな風に見える俺は案外非情なのかもしれない。

いや言い換えれば、純粋に物事を見るヤツなのかもしれない。


「まあただの言い訳に過ぎないんだけど」

「ん?なんか言った?」

俺の思想モードからつい漏れた言葉にも我が友人 四糸よんいと 詩枝うたえは首をかしげながら応答してくれた。

「裁島。さっきからずっとぼうっとしているけど大丈夫?」

裁島さいとうとは俺の苗字だ。嘘ではないのが、笑えるようで笑えない。ウケる。

「ごめんごめん。せっかくのお出かけなのに、迷惑かけちゃったね」

俺はそう言い曖昧に笑う。

今、俺たちがいるのはちょっとおしゃれな喫茶店である。

俺はコーヒーを、詩枝はレモンティーを飲んでいる。

「うんうん、今日は楽しかったよ」

そう言い、詩枝は大人っぽく微笑む。

「んじゃ、今日はこのへんでお開きかな?」

そう言って、詩枝はレシートを持ち、席を立とうとする。

「あ、いいよ。レモンティーの代金は俺が払うよ」

「え?悪いよそんなの」

詩枝は首を横に振る。

「何言ってんだよ。俺とお前の仲だろ?いいよ。置いていけ」

そう強く言うと、詩枝は少し迷いながらもテーブルにレシートを置く。

「んじゃ、お言葉に甘えようかな」

それじゃ、と笑顔で詩枝は喫茶店をあとにしていった。

それを見送ったあと、俺はコーヒーを口に運ぶ。

「はあー」

俺はため息をつく。いや安堵の息だろうか?良くわからない。

そんなことをしていると

さっきまで詩枝が座っていた椅子に誰がか座る。

テーブルを挟んで、迎えにある椅子に座った。

それは『殺人鬼』だった。

俺はこぼさないように冷静にカップを置く。

「これはこれは偶然ですね」

と、俺は平常心で口を開く。

「偶然の偶然は必然。必然の必然は絶対ですよ?《罪止まり》さん」

と少女はニッコリと笑う。

殺人兄妹の長女《黒白殺し》有無憎愛ありなし ぞうあいはそう言った。

背筋が凍る。

表情が凍る

心が凍る。

言動が凍る。

正気が凍る。

命が凍る。

もはや全てが凍ったも同然だった。

だが

「俺の前に現れたということは断罪されに来たんだな?」

そういうと首を振った。

「いいえ、無罪だと裁判官に直接講義しに来たんです」

という。

殺人を許すな

残虐を許すな

非常を許すな

闇を許すな

悪を許すな

罪を許すな

敵を許すな

反逆を許すな

非道を許すな

惨殺を許すな

狂気を許すな

許さずのものを全て殺せ

我が正道という名の非道を君に捧げ

口火を切る。

「それでは」

違う言葉が重なる。

『黒白を殺します』

『裁判を始めます』

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