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悩む男子

 初夏の日差しで若葉が青々とした陰りを地面にうつす。

葉蔭から時折こぼれる強烈な日差しに目をひそめながら、俺は今日も通学路をいく。

初夏を飛び越えて、夏が先にきたような季節に、気象異常も末期だな。とほざきながら、のろのろと学校前の一番キツイ坂を上る。

周りの生徒の姿は早朝ゆえにまばらだ。

なぜ部活動にも入っていない自分が、こんな早朝から学校にくるはめになっているかというと・・・それは昨日の深夜三時近くにあった灰田からの電話のせいだ。

深夜三時にけたたましい音をたてた携帯に、自分が設定したとはいえ爆音といえるドラムと

女のように金切り声をあげるボーカルの声に殺意を覚えながら携帯に手をのばす。

はやく、はやくこの音を止めなけらば妹か母か父に怒られる。

目を軽くあけるとまだ深い夜がそこには鎮座していて、自分が普段おきてる時間ではないことがわかったので、俺は携帯の通話ボタンをピッときった。


よし、寝るぞ。


そう思ってると、再び鳴り出す携帯。

こんな夜中に電話をかけてくるなんて、どこのどいつだ非常識な。

マナーモードにしても光輝き、震えながら自己主張するそれに、等々根負けして電話にでることにした。

さっさと出て要件をすませれば、まだ早く寝れたのだろうが、寝起きの頭にはそれが難しかった。

「・・・なに」

明らかに不機嫌丸出しな俺の声に、灰田のやけにのんびりした声が続く。

「あ・・・出た」

なんだよ。なんなんだよ。その出たって。お前がかけたんだろ。

俺はがっくりと肩を落としながら、怒る気も失せて早く通話を終わらせようと話を促す。

「あんさ、俺、明日日直じゃん」

「もう、今日だな」

「うん。今日日直じゃん」

「で」

「でね、俺今日夜更かししちゃったからー明日おきれるか不安なんよー

日直って朝早いじゃん。だから馨君、代わりにやってくんない? 明後日俺やっからさ」

「・・・えっ」

「君は早く寝てたみたいだし大丈夫だよね! じゃあ、明日は頼んだ」

こちらに反論させる間も与えずに、強引に電話を切られる。

俺は再びかけなおして、たぶん不毛になるであろうこの問答を繰り返すほどの気力がなくて再び枕に顔を埋めた。




 このようなことがあって、俺は現在この道を歩いている。

日直、といえば同じ出席番号の男女が一日ことに交代で行うもので・・・俺の一つ前である灰田は

隣の藤崎と同じ・・・だ。

心の準備が・・・。

学校に近付くにつれてなんともいえない焦燥感に襲われ、悩ましげに息をついた。

早く学校についてほしいような、ついて欲しくないような。

つまり自分は、今のこの時から逃げ出したいのだ。


ちゃんと、しゃべれるかな。俺。


もし、あまりの挙動不審っぷりに「きもい」って言われたら生きていけない。

・・・気がする。



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