第九話 そのメイド、仕事にて
リディアムからの告白から、数日がたった。
ヴァイオレットはと言うと――――まるで何事も無かったのかのように、いつも通り仕事をしていた。
「ふぅ……今日は天気もいいので、お洗濯物がすぐ乾きそうですね」
「そうねぇ〜」
ヴァイオレットとともに仕事をするのは、初老くらいの女性。
「ばぁや様、あとは私が片付けておきます」
「あらそう? じゃあお言葉に甘えて……それにしても、ヴァイオレットと一緒だと仕事が早くて助かるわぁ」
「これも全て、ばぁや様のおかげですよ」
この『ばぁや様』という女性は、幼き頃のヴァイオレットを今のような立派な使用人に叩き上げたメイド長である。
何故か本名は誰も知らず、皆から『ばぁや様』と呼ばれているのでヴァイオレットも従って『ばぁや様』と呼んでいるのだ。
ヴァイオレットを含めた使用人たち曰く、『この屋敷で一番怒らせてはいけない人物』として注意されているが、本人は至って温厚である。
だがメイド長なだけあって仕事には厳しく、ホコリひとつ見逃さない脅威の視力の持ち主だ。
(ばぁや様……普段は温厚でお優しい方だが、未だに頭が上がらない……)
ある日ヴァイオレットの日課である『お掃除』でうっかり汚れが残っていた際、笑顔で「主人に悟られてはダメよぉ〜」と注意された時は、今まで体験したことのないほど背筋が凍ったという。
「しかし、ばぁや様直伝のメイドスキルがあったからこそ、私はお嬢様の専属メイドになれたのだ。今世の師としてばぁや様を敬い、日々努力せねば……!」
そう改めて決意したヴァイオレットは、推し活のためにも『お掃除』を欠かさないのだった。
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