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第六話 そのメイド、天敵にて

 口をすすぎ終えたヴァイオレットは「二人きりの邪魔をしてはいけない」と思い、ゆっくりと歩いていた。


 そんな時だった。


「にゃーん……」

「……猫?」


 どこからか、弱々しい猫の鳴き声が聞こえる。

 ヴァイオレットは鳴き声のする方へ、足を進める。


 するとそこには、一人の少年が木登りをしていた。


「待ってろ……今、助けてやるから……」


 少年が手を伸ばしている先……そこには木に登って降りられなくなったのか、一匹の猫がいた。


「もう少し……あと、ちょっと……!」


 そう言って、手を伸ばした時。少年は足を滑らせた。


「わっ……!」

「危ない……!」


 反射的に駆け出すヴァイオレット。

 元忍びと言うだけあり、瞬きをする間もない速さだ。


「い……ったく、ない……?」

「おケガはありませんか?」

「へ?」


 少年を受け止めたヴァイオレット。それはまるで、お姫様を抱っこするように凛々しく、かっこよかった。


「か、かっこいい……」


 少年も思わず頬を赤く染めてしまうほど、男前な助けかただ。


「猫を助けようとしてたんですよね?」


 少年を下ろしながら、ヴァイオレットはたずねる。

 そこで正気に戻ったのだろう。『ハッ!』とした少年は、慌てて頷く。


「そ、そうなんだ! 猫が木に登って、降りられなくなってて……」

「なるほど、少々お待ちください。私が捕まえてきます」

「いや、ここは男のぼ……俺が……!」


 少年が言い終える前に、ヴァイオレットは無駄のない動きで木を登る……いや、駆け上がる。


 そうしてあっという間に、猫の元へとたどり着いたのだ。


「大丈夫、もう怖くないですよ」


 そしてそのまま、猫を抱えて降りてきた。

 ただ呆然と見ていた少年は、再び『ハッ!』としながらヴァイオレットに駆け寄る。


「お前すごいな! あの動き、どうやったらできるんだ!?」

「……昔、毎日のように山の中を駆け回ってたので」


 もちろん昔とは、前世のことだ。

 しかし習慣とは恐ろしい……生まれ変わった今でも、隙があれば忍びとして鍛錬してしまうのだから。


「ぼ……俺もマネしたら、できるかな!?」

「無理だと思います」


 キッパリと言い切るヴァイオレットに、少年は見るからにしょんぼりとする。

 少し可哀想だと思ったヴァイオレットは、咳払いをしながら猫を渡す。


「ゴホン……私の場合、特殊な訓練を受けていたので。……まずは毎日走ったりして、体力をつけるのはどうでしょう?」

「なるほど!」


 キラキラと目を輝かせる少年を横目に、ヴァイオレットは我に返る。時間をかけすぎてしまった、と。


「主人が待ってるので、失礼します」

「あっ、待って!」

「なんですか?」

「名前! ……聞いてもいい?」


 一秒でも早くミリアリアの元へ帰りたいヴァイオレットは、振り返らずに答える。


「……ヴァイオレットです」


 そう言って、消えるように去る。


「『ヴァイオレット』……そうか、僕の名は……って、居ない!?」


 消えたヴァイオレットに、少年は残念そうに猫を抱く。




「また会えるといいな……」




 ▷▶︎◀︎◁▷▶︎◀︎◁▷▶︎◀︎◁




 そうして顔合わせが終わる頃、アシュレイは突然「紹介したい子がいる」と、ミリアリアとヴァイオレットに告げる。

 アシュレイが呼ぶと、おずおずとした態度で一人の少年が現れる。


 その瞬間――――ヴァイオレットの顔つきが変わった。


「紹介が遅れてしまいました、弟のリディアムです」

「弟の、リディアムです……」


 それは先程、猫を助けようとした少年……。




 そしてこの物語……『マジLOVE♡ふぉーえばー』でヴァイオレットと共に悪役である、『リディアム・ミルドレッド』だった。

お読みいただきありがとうございます。


良ければブックマークや感想、アクションや評価など入れてくださると今後の励みになります。


これからもよろしくお願いしますm(*_ _)m

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