第三話 そのメイド、転生にて
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――――という前世を思い出したのは、襲ってきた盗賊を返り討ちにしている最中だった。
新たな生を受けた彼女は、齢三歳にして大人顔負けの腕っ節を誇っていた。
……というのも、実は前世の記憶を思い出すまでは年相応のか弱い幼子だった。
しかし前世の記憶を思い出した彼女は……前世に文字通り死ぬほど耐え抜いた修行の日々を思い出し、忍術や体術を用いて盗賊たちを返り討ちにしたのだ。
多少の反動こそはあったものの……前世に比べれば、弱肉強食。いくら幼子と言えど、圧倒的な力さえ見せつければ何度も文字通り殺す気でかかってきた里の大人たちに比べれば優しいものだった。
盗賊たちを土下座させながら、前世を思い出した彼女は自身の状況をどうにか把握することを優先した。
まず理解したのは、今世でも親がいないということ。
現在の彼女は、小さな孤児院で生活している。親は流行病で死んだのか、それとも育てられない理由でもあったのか……菫色のペンダントだけを彼女に残して、孤児院に捨てたのだ。
次に、今世での彼女の名は『ヴァイオレット』。
これは菫色のペンダントから、院長が付けた名だ。安直だが、わかりやすい。
しかし『ヴァイオレット』とは『マジ♡えば』の悪役の名なので、あまりいい気持ちはしなかった。
そして途中で気づいたが……この世界、『魔法』というものが存在する。
これはどうやら忍術とは違うようで、盗賊たちをシバいている最中にうっかり発動させてしまい、危うく情報源を失うところだった。
「それで、この賊の頭は誰だ?」
「お、俺です……」
見るからに強面の筋骨隆々とした男が、恐る恐る手を上げる。
「では頭、私を捕まえてどうするつもりだった?」
「つ、捕まえて、人攫いに売るつもりでした……」
(ヴァイオレットの名に、人攫いに売られかけるとは……いよいよ『マジ♡えば』の悪役と同じ展開ではないか……)
「……ん? 『マジ♡えば』の悪役と同じ……?」
紫苑……改め、ヴァイオレットは頭に質問する。
「頭、ココはどこだ?」
「ココはスプリング王国の、グリジッド公爵家の領地の一部の……」
「『スプリング王国』の『グリジッド公爵家の領地』だと!?」
「ひぃっ!」
聞き覚えのある地名に、彼女は一瞬にして理解した。
「まさか、そんな……いや、しかし……」
疑心暗鬼になりながらも、ひとつの可能性に彼女は思わず笑いが込み上げてくる。
「我ながらついていない……いや、逆についている……!」
ココは『マジLOVE♡ふぉーえばー』の世界。
そして自分はその中の『悪役メイド』……『ヴァイオレットである』と。
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