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第二話 そのメイド、前世にて

 ▷▶︎◀︎◁▷▶︎◀︎◁▷▶︎◀︎◁





 ――――遡れば、十七年と少し前……――――




 生前のヴァイオレットはこの世界よりも発展した時代の、『日本』という国に住む……至って普通のくノ一だった。


 生前の彼女に親はなく、また彼女の名前という名はなかった。だが彼女をさす忍び名は『紫苑(しおん)』とされ、自他ともにそう呼ばれていた。

 紫苑は小さな忍の里で細々と暮らしながら、時間があれば忍びとしての修行。時折任務を行っては修行の日々を過ごしていたのだった。


 そんなある日のことだ。


 とある標的(ターゲット)に近づくため、標的の趣旨趣向を徹底的に調べあげていた時だった。

 彼女は出会ってしまったのだ。『マジLOVE♡ふぉーえばー』と言う、女性向け小説に。




『マジLOVE♡ふぉーえばー』……略して『マジ♡えば』とは。


 公爵令嬢『ミリアリア・グリジッド』と、侯爵令息『アシュレイ・ミルドレッド』。この二人がとある出会いによって、一目惚れから始まる甘く切ない物語であり……いわゆる恋愛小説だ。ちなみに、重版もされたヒット作である。





 一般人からすれば、ただの娯楽の大衆小説。だが紫苑からすれば、初めて触れた禁断の娯楽小説だった。


 これをキッカケに。紫苑は忍び業から足を洗い、一人ひっそりと里を抜け出した。


 抜け忍となった紫苑は里の追っ手を退ける一方、『マジ♡えば』の一ヲタクとしてそれはもうエンジョイしていた。


 ……しかしそんな日々は、呆気なく終わってしまったのだった。




 ある日、紫苑は応募していたサイン会に当選した。

 当然、紫苑はそれはそれは大いに喜んだ。どのくらいかと問われれば、サイン会の当選通知から当日までの約一ヶ月、一睡も出来なかったくらいだ。


 そしてサイン会当日、紫苑は浮かれていた。いや、浮かれまくっていた。

 サイン会で話す内容は最新刊の感想はもちろん、自身の人生にどれほどの影響を与えたのか。それらを限られた時間で一言一句間違えずに熱弁するために、彼女は毎日発声練習も怠らなかった。


 いざ会場へと向かう途中……悲劇は起きた。

 彼女が道を渡っている最中、爆速で走る人力車に紫苑は轢かれたのだ。

 普段の彼女なら、余裕で避けられただろう。しかし事故当時の彼女は約一ヶ月の不眠に、サイン会のことで頭の中は浮かれきっていた。

 そういった条件が重なり、人力車に轢かれた彼女の身体は宙を高くとび。受身をまともに取ることもできず、運悪く頭から地面に落ちたのだ。


 悲劇はそれだけではなかった……。


 この人力車はもちろん、サイン会も全て里の追っ手による、彼女をおびき出すための罠だったのだ。


 紫苑は薄れゆく意識の中、一瞬にして全てを悟った。


 そして彼女は願ったのだ……。



「来世はどうか……『マジ♡えば』の最後を、見届けられ……ます、ように……」



 そうして現代の『日本』に住む『紫苑』の人生は、幕を閉じたのだった……。

お読みいただきありがとうございます。


良ければブックマークや感想、アクションや評価など入れてくださると今後の励みになります。


これからもよろしくお願いしますm(*_ _)m

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