黒いラッパ
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(お気持ちはとても嬉しいです。)
黒いマント
黒い帽子
真っ青な顔
その男はラクダに乗っていた
砂漠をさまよっていた
「水はどこにあるんだい?」
男の武器はたった一つ
黒いラッパだ
「水はどこにあるんだい?」
男は有名な音楽家
実は、一人息子
でも、旅をしたかった
地球を見たかった
ピュルル~~
男の武器はたった一つ
黒いラッパだ
ラッパを吹いてどうなるの?
砂漠で吹いてどうなるの?
そう思う人もいるでしょう
でも、男にはラッパしかないから
仕方ない
ピュルル~
ほら、何か見えてきたよ
吹けばどうにかなるもんだね
何も無い所でもね
「お嬢さん、どうされましたか?」
娘の服はボロボロだった
ボロ雑巾のようだった
でも、可愛かった
「後ろに乗りますか?」
「お願いします」
ピュルル~
ラッパを吹いてどうなるの?
砂漠で吹いてどうなるの?
どうやら、出会いが会ったようだ
旅は不思議なもんだねぇ
ピュルル~
「お兄さん、何をやってるんだい?」
目の前にはカラス
黒いカラス
ぼくの仲間なのか…
「いや、水を探してまして」
「この砂漠の中?」
「はい」
「そりゃ、困ったもんだね」
「なぜですか?」
「この辺に水は無いよ」
「えっ…」
「全部枯れちゃったよ」
求めていた水が無い
しかも、お嬢さんも乗っている
こりゃ困ったもんだ
どうする?
「そのラッパはなんだい?」
「これはぼく自身です」
「そうかい、君なのかい」
「はい」
「ちょっと吹いてくれないか」
ピュルル~
「なるほどねぇ」
「何ですか?」
「もう一回、吹いてれないかい?」
ピュルル~
「今夜は空を見るといい」
「空ですか」
「そうだよ」
「分かりました」
「君は良い武器を持っている」
「ありがとうございます」
「君に幸あれ」
パタパタパタ…
黒いカラスは飛び去った
「お嬢さん、大丈夫かい?」
「大丈夫です」
「今夜は良いことがあるそうだ」
「そうなんですね」
「きっと雨が降るのだろう」
「だと嬉しいですね」
「一緒に祈ろう」
ピュルル~
男はラッパを吹き続けた
砂漠を旅し続けた
そして、夜になった
「もうカラカラだ。水はどこにあるのだろう」
ピュ~
「もう吹けないよ」
ピュ~
「ぼくはどうなるんだろう?」
パタパタパタッ
「やぁ、元気かい?」
「さっきのカラスさん、もうクタクタでカラカラですよ」
「それは大変だったね」
「今日、良いことがあるんですよね」
「そうだよ」
「いつあるんですか?」
「もうすぐだよ」
「雨ですか?」
「何だろうね」
「教えて下さいよ」
「教えられないね」
「どうしてです?」
「それは君へのプレゼントだから」
黒いカラスは飛び上がった
ぼくも空を見上げた
キラキラキラキラ…
満天の星空だった
「カラスさん、プレゼントってこれですか?」
「まだまだだよ」
星は流れ始めた
夜空に流れ始めた
かと、思うと…
こっちに向かってきた
流れ星が向かってきた
パン、パン、パン、パン
「水だ」
目の前に広がっていたのは、オアシスだった
そして、緑だった
ぼくはラクダから飛び降りた
そして、走り出した
ガブガブガブ…
水を口に流し込んだ
ガブガブガブ…
まだまだ流し込んだ
ガブガブガブ…
まだまだ…
(お嬢さんは?)
後ろを振り向いた
そこにお嬢さんはいなかった
「カラスさん、お嬢さんを知りませんか?」
「お嬢さん?」
「そうです、ぼくの後ろに乗ってたじゃないですか」
「知らないね」
「えっ…」
「誰もいなかったよ」
「いや、確かにいましたよ」
「知らないね」
ぼくはショックを受けた
お嬢さんを救えなかった
自分だけ水を飲んだ
自分だけ幸せになった
それでも…
それでも、ぼくは
諦められなかった
お嬢さんと会うことを諦められなかった
ピュルル~
ラッパを吹いた
ラッパを吹いてどうなるの?
砂漠で吹いてどうなるの?
そう思う人もいるでしょう
でも、これが武器なんです
彼の強みなんです
「お兄さん」
「お嬢さん?」
「ありがとう、私を救ってくれて」
「あなたはさっきまでカラスだった」
「私は呪いをかけられていたの」
「そうだったんですか」
「でも、あなたが救ってくれた」
「私は何もしてないですよ」
「あなたはラッパを吹いてくれた」
「ぼく自身ですか」
「そう、あなたが私を呼んでくれたの」
お嬢さんは黒いドレスを着ていた
髪にはオシャレなアクセサリーを着けていた
ぼくのお姫様だった
「一緒に星を眺めましょう」
「良いですね」
「夜空は美しい」
キラキラキラキラ…
満天の星空だった
黒い男に黒い女に黒いラッパ
3つの黒い点が見えた
そして、点が線になった
ピュルル~
ラッパの音色が鳴り響いた
パン、パン、パン、パン
星は落ちていった
砂漠に落ちていった
落ちるたびに水が生まれた
緑が生まれた
そして、いずれは生まれるでしょう
ぼくらのお城が




