天才技術者”悪魔”登場
この作品に登場する地名や組織名、人名、施設、科学技術は実際のものとは一切無関係です。
2132年、100年ほど前から文明の発展は減速し、国際化や文化だけが発達した。大きく変わったことと言えば人々が主にたまごから生まれるようになったことくらいだ。
我が名は金競 悪魔。昔の人は我の名をキラキラネームなどと言うかもしれないが、山瞬テロ事件(2012年)を鎮圧した英雄、筍 攻撃がキラキラネームだったことから、以降、子どもにはキラキラネームをつけるのが主流になった。しかし、我が子の名は馬子である。現在15才で2人で狭い一軒家で暮らしているのだが、いっこうに働かずに、いつも競馬に行くかお菓子を食べるかしかしていない。せっかく技術者のたまごで、学校も卒業したというのにだ。ただ、たまに電話をして知らない人からお金とお手紙が届いていることがあり、我はそのお金の半分をもらっているので大目に見てやっている。そのお金で自分がおおいに助かっていることは言うまでもない。
今日は7月27日。姫星公園(団地の公園)のペンチに座って風が来るのを待っていた。
我は10年ほど前、23才の頃から水素水という昔の商品の研究をしていた。そして、今日もその研究のためにこの公園を訪れた。プラスチックのような素材の滑り台と小さな砂場、さらに座るためであろう巨大な硬くて冷たいペンチがあるだけの小さな公園だ。巨大なペンチが印象的なので周辺の住民はペンチ公園と呼んでいる。1時間風を待ったが、団地によって遮られるせいか、あまり風は吹かなかった。ただ、周囲に湿った空気が立ち込めていただけだった。
最後に滑り台を滑って実験用の水素水を飲み干した。やはり何も起きない。10年研究をしているが、水素水にはどういう効果があるのか、または、どうすれば効果が引き出せるのかが全く分からないのだ。もうこの研究が嫌いだった。だが、ほかにすることはなかった。
山瞬テロ事件により多くの情報が消失した。水素水の情報も例外ではない。なので、水素水が昔流行した理由がわからなかった。我も何度か水素水を商品化したことがあるがすべて圧倒的な赤字で終わっている。なんのために風を待っていたのかももうわからなかった。ほうんとうに。
まだ午後3時だ、我はいつも通り近くの建物に突き刺さった日傘を手当たり次第に盗んで帰った。我は日常的にこのような極悪非道を繰り返している。こういうことは技術者のたまごである我でも犯してしまう人間としての性格である。つまり、個性である。
結局、水素水の研究は赤字なので、副業の卵製造機を解体する仕事と馬子のお金で細々と暮らしているのだ。
帰ってくると馬子はいなかった。テーブルにはお金と手紙が置いてあったので、馬子は競馬に行ったのだろう。お金を手に取ろうとすると、手紙の差出人のところに月日 星と書いてあった。確か、近所に住むおばあちゃんだ。珍しく知っている人からの手紙だったので見てみると、体に気を付けるんだよとか頑張ってねとかそんなことが書かれていた。毎回違う人からこのような手紙に添えて平均数十万円のお金が送られてくるのは不思議なことだったが、それで生活ができているからあまり考えないことにしている。代わりに、このNNSのまちの狭い家から抜け出したいということばかりを考えている。
・・・あの時逃げなければ、毎日そう思っているがやはりあの時は逃げて正解だったと自分に言い聞かせている。15の時から我は爆発物への対処をする仕事をしていた。その時は我が技術者のたまごだとか、すごい血筋だとかで周囲の人々の期待の星で、希望に満ち溢れていた。しかし、18の時ハンバーガー職人の卵製造機に仕掛けられた爆弾を解除する仕事が与えられ、1人で現場に向かった。今までは数人のグループで仕事をしていたが、我が「周りに人がいると足手まといで集中できない」とか、「全て我1人でできる」などと上司に言っていると、その時初めて許可が下りた。いざ現場につくと、まず何をしたらいいか分からずに慌ててしまい、爆発まで残り10分ほどあったが途中であきらめて逃げ出してしまった。正直とてつもなく恥ずかしいが、逃げることしか考えられなかった。卵製造機というのはその機械から生まれた人は全員消滅してしまうという最大の欠点がある(実際は利点として利用されるのだが)。したがって、卵製造機はテロリストたちの格好の的なのである。そして、ハンバーガー職人の卵製造機は日本に1つしかなかった。つまり、我のせいで日本ではあまりハンバーガーが食べられなくなってしまったのだ。もちろん、この事件によって我は多くの人たちの反感を買い、退職を余儀なくされた。犯罪をしたわけではないので刑務所には入らなくて済んだが。
我が馬子をかったのはその年だった。2、3年間の爆発物の仕事と退職金は子供1人を育てるには十分だった。(それほどその仕事は高収入だった。)我はもちろん技術者のたまごを選んだが、そのたまごはなぜかとても安かった。このとき馬子のたまごが安くなかったら、今頃一人暮らしで、今よりもっと退屈で貧しい暮らしをしていただろう(その点で馬子には感謝している)。ただ、水素水の研究を始めたせいで、24の時にお金は尽きてしまった。それからは、皮肉なことに卵製造機を解体する仕事に就くことができたので、そこの収入でなんとか暮らしていくことができた。その後、馬子宛にお金が届くようになってから、やっと生活が安定したところだ。
...こんなことを考えたところで髪が抜けるだけだ。そんなことを思いながら家のテーブルに座って大好きでいつも集めているみかんの繊維を食べていると、水素水をキャップに入れて飲みたくなった。そして、そっとキャップに注ごうとすると、案の定こぼれてしまった。あちらこちらと雑巾を探していると、ベットの下から去年馬子からもらった33枚の誕生日雑巾を発見した。
「そういえば今日は我の誕生日か。もう34才か...」
完全に忘れていた。誰もお祝いしてくれないし、自分でも忘れていた。1人でお祝いするとするか。そう思い、チョコレートケーキを携帯電話で注文し、テーブルに伏せて待った。まもなくして、玄関を開ける音がした。
「おかえり!、、間違えた、ただいま!ショートケーキを買ってきたよー、あ、誕生日おめでとう」
馬子が帰ってきて、右、左とウインクしながら言った。
「おかえり、我は今さっき自分の誕生日をおもいだしたよ。よく覚えていてくれたね。」
心の中でありがとうと言った。自分の子供だからこそ直接ありがとうとは言えない。
「まあはやくケーキを食べようよ」
「我はショートケーキよりもチョコレートケーキのほうが好きだと何度...」
ピンポンピンポンピンポン
「そういえばチョコレートケーキを頼んだんだった。」
配達ロボットからケーキを受け取り。席に戻ると、もうすでに馬子はショートケーキを食べ始めていた。そのままそれぞれが買ったケーキを食べることになった。
夜、暗殺者に狙われた時の対処法を練習し、眠ろうとすると、眠っている馬子のそばに日記があることに気づいた。
『今日は父の誕生日だというのに直接感謝を伝えられなかった。でも、競馬で5万当たったしそのお金でずるいともいわれずにケーキが食べられた。来年こそ感謝を伝るぞ卍』
我は右、左とウインクする(これは馬子の癖である)馬子を思う浮かべ、微笑んだ。どうせ何もしないくせに、と眠っている馬子に心の中で言った。そのまま寝ようと布団に向かうと、我が携帯電話に珍しくメールの着信があった。大量の自分宛てのメールの列の一番上にある、一つは ほうれ 壊 という友達からの誕生日おめでとうメールと、もうひとつは、件名なしのメール。仕方なくそれを開いてみると、本文からこう書いていた
『ほうれ 費 仕事の件
8月1日にNNSMCの3階に来てくれないか。とても大事な話がある。このメールを見忘れたらこの日までにそのことを伝えろ。』
ほうれ費は我が爆発物の仕事をしていた時の上司で、山瞬テロ事件で筍|攻撃とともに悪と戦い英雄と呼ばれた ほうれ 報 ら兄弟の末裔でもあり、悪とともに筍攻撃と戦ったほうれ 報の父、ほうれ んそうの末裔でもある...これは山瞬テロ事件のネタバレか。
そして、友達の壊の父でもある。8月1日は今が7月27日だから3日後くらいだ、7月が30日までなら。
今に飽きていた我は特に深く考えず、行こうと 決意した 。
当日、目が覚めると、そこは
自分の家だった。 普通に普通で2人分の朝ごはんを作り、馬子を起こして目の前で2人分食べて見せた。馬子が怒ったから仕方なく馬子の分を作り直した。
「無理やり起こすなって言ったろ」
どうやら起こしたことに怒っているらしい。寝ている周りでドタバタ飛び跳ねていたことをそんなに怒るか?間違えて2回くらい踏んだのがいけなかったか?
考えていると馬子の朝ごはんができたから馬子の前に出した。朝ごはんを食べ始めると機嫌が直った。
「今日ってなんか仕事に行くんでしょ?いつもと違うやつ」
「ちがう、我にもわからない」
「なんでだよ!卵製造機解体か水素水とかいう怪しいやつ以外なにがある?てゆうかそもそも卵製造機の解体に業者とか必要?」
聞く気もないくせに質問をたくさん浴びせてくる。
「卵製造機ってのはな、対消滅で得た巨大なエネルギーにより超高温・高圧にしたハフニウムとNGB原子核を同時に急速にBECにすることでできるNGBヘキシウム通称チクワニウムかっこ日本製かっことじの準結晶を使用した細胞型マイクロチップ的なiPS細胞を脳に増殖することで”卵”を作る。それには内部で莫大なエネルギーが制御されるため、優秀な技術者が必要なのだ!」
ふん、つまり我は非常に優勝な技術者!!
振り返ると、馬子は椅子の上で眠っていた。椅子の上に立って眠るとは上出来だな!我の催眠術が効いたのか。馬子はそのままにしてNNS MCへ足を運んだ。NNS MCは駅をまたげばすぐに着く。主に最近流行っているテロリストを増やさないための公的機関のNNS支部である。
元職場NNS MC三階につくとそこには ほうれ 費 が立っていたから先に文句を言った。
「もう退職した我に何の用があるんだ」
わざとめんどくさそうに言ってやった。
「急に呼び出して済まない。今日、、新生0會を制圧しに行くんだが、そのアジトの最深部にあると思われる卵製造機を解体する班にちょうど一人足りていない。君は元々私の子供たちとここの爆弾を解除する仕事をしていたし、仲もいいだろう。そして何より今ちょうど卵製造機を解体する仕事をしているそうじゃないか。こんなに適任な人材が他にいないだろ?挽回のチャンスだとでも思って頑張ってくれ。第一拒否しても作戦が終わるまでは口外させられないから帰さんがな。」
「こんなぎりぎりになって人を集めて、さらに一度追い出した人の助けを借りるなんてもしかして相当な人手不足なのか?まあそりゃあ人気ないよな、すごい技術を要請する癖にほぼ汚れ仕事みたいなもんだからな」
「なんで君が必要になったかわかるか?それは君が前の作戦に大失敗したせいで一班六人以上が鉄則になったんだ。お前があの時みんなを見捨てて一人で行動しなければ今回お前はいらなかったのにな、ああ職人のハンバーガーが食べたいなー。あははは」
なんという皮肉なめぐりあわせか。我は黙って部屋を後にした。ドアの向こうではまだ費は笑っていた。
「お!悪魔じゃないか!」
振り返るとそこには壊と、その双子の爆がいた。




