9 お祖母様の木
《聖魔法の使い方。レベル10——》
朝の光がまだ薄明るい中、私は静かに家を出て、祖母が愛した大きな木の前に立った。
ウェンナイト家で「木」と言えば、それは祖母の木であり、彼女が生前最も好んだ木であった。
私は深呼吸をし、全身に魔力を巡らせるように意識を集中させた。手のひらから足の先まで、頭の先まで、体内のマナを感じ取る。
目を開け、枯れた木に手をかざす。
土の中に水分を流し込み、それを木が吸い上げるイメージを思い描く。
お祖母様の木は、かつて青々とした葉を広げ、壮麗に空を仰ぎ、美しい葉が陽光を浴びてきらきらと輝いていたと聞く。
今やもう、その姿は想像することすら難しいほどに枯れ果て、ただ静寂と寂寥が広がるのみ。
しかし、もしうまくいけば、新たな命が芽吹くかもしれない。
私もここまでの魔法はしたことがない。
私の体から金色の粉が舞い上がり、木全体を包み込んだ。
その瞬間、足元がふらつき、私は思わずつまずいてしまった。
木の様子を確かめようとしたとき、遠くから足音が近づいてくるのが聞こえ、私は慌てて本を手に柱の陰に隠れた。
誰だろう?
「さっきの光は何だったのかしら…え!」
母の驚いた声が聞こえた。
母が視線を向ける先には、私が魔法をかけた木があった。
見ると、枯れたはずの木に、青々とした葉が生い茂っていたのだ。
私は呆然と立ち尽くしていると、父と兄がやってきた。
「レティシアはまだ寝ているかな?」「寝ているんじゃ…えっ、父上、成功したんですか?」
成功?
何かしていたのだろうか。
「いや、どんな魔法を使っても、結果を変えられなかった。」
まさか、ね?
「でも父上、お祖母様は立派な魔法使いだったんですよね?なら、お祖母様がかけた魔法が今発動したのでは?」
いや、絶対に私の魔法じゃない。
お父様とお母様は話し合い、この出来事はお祖母様がかけた魔法が今発動したということになり、幕を閉じた。
なんで今、このタイミングで?
あ、もしかして、私の聖魔法が祖母の魔法を引き出したのだろうか?それとも、ただの偶然なのか?
「ジークハルト、ルーク、何しに行くつもりだったの?」母が父と兄に尋ねた。
「レティシアを迎えに行くところだ。」
「あら、一緒よ!可愛いレティシアのところへ早く行きましょう!」
どうしよう…とりあえず、本を隠さないと!
私は茂みの間に本を隠し、見えないことを確認してから、家族の前に顔を出した。
「おはようございます!お父様、お母様、お兄様!」
みんなは驚き、すぐに微笑んだ。
「「レティシア!」」
私は家族の胸に飛び込んだ。
「みんな、大好き!」
みんなが生きている。
よかった…。
朝食を終え、私は図書室へ向かった。そこには、魔法に関する書物が並んでいた。
『魔法には普通魔法と特別魔法がある。普通魔法は5種類。火、水、風、土、そして聖魔法。
光魔法と闇魔法は、限られた者だけが使える特別魔法である。魔法は、想像することや詠唱によって発動する。
レベルが低いものは想像するだけで発動するが、レベルが高くなるにつれて、より高度な知識や計算が必要となる。レベル45が平均とされる。
テレポート魔法などは、非常に多くのマナを消費するため、扱いが難しく、成功してもその場で気絶することが多く、あまり使われない。
マナとは、体内にある魔力の源であり、微量でも貴族なら誰でも持っている。
莫大なマナを持つ者は非常に少なく、レベル100を扱える者はほとんどいない。』
「ふーん」
前世ではレベル25まで行くことができたから余裕。
『風魔法、レベル1、浮遊』と書かれたページを開く。
さっと目を通す。
本が宙に浮くことを想像し、手をかざす。
「風魔法、浮遊」
手から緑色の光が放たれ、本が宙に浮いた。
この感覚、久しぶり。
私は時間を忘れて無我夢中でやり続けた。
魔法書を読み進め、火魔法、水魔法、風魔法、土魔法、聖魔法を一日でレベル5まで扱えるようになっていた。
思ったよりもスムーズにできてしまった。
前世ではこんなに進まなかった気がするんだけど……。
しかも学園の入学可能レベルがレベル20で、平均レベル45と言われているのに、こんなに簡単にできてしまっていいのだろうか。
一刻も早く頑張らないと…。
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