5 誘拐
3年前の出来事は、今でも鮮明に覚えている。
5歳のレティシアが私の方に来て
『もうおへやにいってもいいですか?』
と聞いた。
私はもう眠いのかと思って私のメイドのランをつけさせ、部屋に帰らせた。
その時のことをどれほど後悔しただろうか。
少しして、ランが顔を真っ青にしてこちらにくるのを見つけた。
嫌な予感がした。
『レティシアお嬢様が!』
その言葉を聞いた瞬間、私の予感は的中した。
『レティシアがどうしたの⁉︎』
『ゆ、ゆ、』
『落ち着いてラン。落ち着いて話して』
『お、お嬢様が、ゆ、誘拐されました』
その言葉を聞いた瞬間、私は目の前が真っ暗になるのを感じた。
『申し訳ございません!どうぞ私に罰を・・・!』
ランは震えている。
彼女の腕から血が出ているのに気づいた。
『いいえ、あなたの腕、血が出ているわ。レティシアを守ってくれたんでしょう?医務室に行きなさい』
そういうと私は走ってレティシアの部屋に向かった。
お願い!嘘だと、嘘だと言って!
だがその願いは叶わなかった。
廊下の窓際にレティシアの靴と髪飾りが落ちていたからだ。
ランは小さい頃から知っているけど嘘をつくような子ではない。
『嘘、嘘でしょ』
私は取り乱していた。
警備は厳重なはずよ。
向こうから剣の手合わせを終えたジークハルトとルークが話しながらきた。
『!ロレイナ!どうした?何があった⁉︎』
ジークは泣き崩れている私を見るとすぐに駆け寄ってきた。
『母上大丈夫?』
ルークが心配そうに見つめる。
『ジーク、レティシアが、レティシアが・・・ゆ、誘拐されたわ』
ジークは私を見て、そして私の手の中にあるレティシアの髪飾りと靴を目にし、言葉を失う。
『ロレイナ、心配するな。レティシアは大丈夫だ』
大丈夫。
その言葉を聞いて、その時の私がどれほど助かったかジークは知っているのだろうか。
ジークは護衛騎士とレティシアを探しに行くと言った。
ジークはルークの頭を撫でる。
『いい子に待っているんだぞ。レティシアと一緒に帰ってくるから、護衛を連れて先に部屋に行きなさい』
ルークは頷いて部屋へ向かった。
ルークの姿が見えなくなったらジークは怒りをあらわにして護衛に教の門番は誰か聞き、その者に私が帰ってきたら楽しみにしておけと伝え、夜の闇に消えていった。
だが戻ってきたジークの腕にいるはずのレティシアの姿がどこにもなかった。
私は毎晩泣いた。
レティシアのことを思い出しては泣く日々だった。
ジークは何度も探しにいったが、レティシアは見つからなかった。
あの時はジークもルークにも心配をかけたわね。
レティシアが見つかって、本当に良かった。
今、きっと人生で一番幸せだわ。
家族が一緒にいることが何よりの幸せね。
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