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転7 また危険なキャンプ

 夜も更け、彼らが食事を終えてキャンプファイヤーを囲んでいる頃、空は一面に星が瞬き、静かな森の中で焚き火の炎がゆらゆらと揺れていた。坂井が得意げに焚き火の前に立ち、皆に向けて腕を広げた。


「どうだ、この焚き火の盛り上がり!やっぱりキャンプの醍醐味はこれだろう?」

 坂井が自信満々に言うと、コタローが笑いながら返した。


「確かに、焚き火ってなんか癒されるよな。でも、坂井、お前が火を起こしてる姿、まるでサバイバル番組の司会者みたいだったぞ」


「おいおい、司会者って!俺はどっちかっていうと、アクション映画のヒーロータイプだろ?」

 坂井は胸を張って自信満々に言った。


「まあ、確かにヒーローっぽいかもね。特にその焼肉への執念は、なかなかのものだし」

 玲奈が笑いをこらえながら言うと、彩花もクスクスと笑い始めた。


「でも、確かに坂井さんって頼りになるところがありますよね。さっきも火を起こすの、すごくスムーズだったし」彩花が感心したように言うと、坂井は照れたように笑った。


「そりゃあ、俺はアウトドアの達人だからな!何でもできるんだぜ!」

 坂井はますます得意げに言ったが、その時、森の奥から不気味な音が聞こえてきた。


「…おい、今の音、聞こえたか?」

 コタローが急に真剣な表情で耳を澄ませる。


「え?何かの動物かな?」

 彩花も不安そうに周囲を見渡す。


「もしかして、クマとか?」

 玲奈が恐る恐る言うと、坂井は不安を払拭しようとするかのように大きく笑った。


「クマ?冗談だろう?この辺りでクマなんか出るわけ…」


 しかし、坂井の言葉が終わる前に、またもや森の奥から異様な音が聞こえてきた。それは足音のようでもあり、何かが木々を掻き分けているような音だった。音は次第に近づいてくる。


「こ、これはやばいかもしれないな…」

 コタローは冷や汗をかきながら、状況を把握しようとする。


「もしかして、本当にクマが…?」

 彩花が怯えた声で言ったその時、暗闇の中から巨大な影が見え始めた。


「みんな、落ち着け!とりあえず焚き火の周りに集まれ!」

 坂井が指示を出し、皆が一斉に焚き火の近くに寄った。


 影はますます近づいてきた。焚き火の明かりで照らされたその姿は、どう見ても巨大な獣だ。しかも、腹部には赤黒い毛が混じっており、鋭い爪が光っている。


「坂井さん、どうするんですか!?あのクマ、こっちに向かってきてますよ!」

 玲奈がパニック気味に叫ぶ。


「落ち着け、玲奈!こういう時こそ冷静に行動するんだ!」

 坂井は冷静さを保ちながら、素早く周囲を見渡し、手にしていた焚き火の木の棒を持ち上げた。


「坂井、まさかその棒で…?」

 コタローが驚愕の表情を浮かべる。


「おうよ!こいつで奴を追い払ってやる!男坂井、ここに見参だ!」

 坂井は勇ましく焚き火の棒を振りかざし、クマに向かって一歩踏み出した。


「ちょっと待って、それ危険すぎるって!」

 コタローが慌てて止めようとするが、坂井は一歩も引かない。


「俺に任せとけ!これは男としての見せ場だ!」

 坂井は一気にクマに向かって突進し、焚き火の棒を振り回した。


 クマはその動きに驚いたのか、一瞬足を止めたが、次の瞬間、恐ろしい唸り声を上げて

 坂井に向かって突進してきた。


「おいおい、マジかよ!?」

 坂井は一瞬動揺したが、次の瞬間には再び冷静さを取り戻し、

 素早くクマの目の前で焚き火の棒を振り回した。


「うおおおおおおおお!」


 坂井の雄叫びとともに、火のついた棒がクマの顔のすぐそばで閃いた。


 クマはその炎に驚き、後ずさりする。

 その間に、坂井はさらに勢いをつけて棒を振り下ろし、クマを威嚇する。


「どっかいけ!どっかいきやがれ!!俺は強いぞ!!うおおおおおおおおおおおおおーー!!!」坂井の叫びが森に響き渡ると、クマはついに堪えきれず、怯んで森の奥へと逃げていった。


「やった…!クマが逃げた!」

 玲奈が歓喜の声を上げる。


「すごい、坂井さん…本当に追い払ったんですね…」

 彩花も恐怖で震える中、信じられないような表情で坂井を見つめる。


「これが坂井誠だ!俺に任せておけば大丈夫だって言っただろ?」

 坂井は息を切らしながらも、満面の笑みを浮かべている。


「お前、本当にすごい!まさかクマを追い払うなんて!」コタローも感嘆の声を漏らした。


「まあ、俺の腕にかかればこんなもんさ。よし、みんな、もう大丈夫だ。安心して今夜はぐっすり眠ろうぜ!」坂井は頼もしげに皆を見渡しながら、焚き火の前に再び座り込んだ。


「でも、本当に坂井さんのおかげで助かりました…これからも頼りにしていますね」

 彩花は坂井の肩に軽く手を置き、感謝の意を示した。


「もちろんさ!これからも俺がみんなを守るぜ!」

 坂井は自信満々に答えたが、その顔にはほんの少しの照れくささも見て取れた。


 こうして、彼らは再び平穏を取り戻し、キャンプの夜を過ごすことができた。坂井の勇敢な行動は、彼らの絆を一層深め、忘れられない夜となった。これからも、彼らは共にさまざまな困難を乗り越えていくことだろう。そして、何よりも坂井の魅力が全開に輝いた夜だった。

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