転6 キャンプ
数日後、ついにキャンプの日がやってきた。オフィスでの仕事が終わると、コタローたちは車に乗り込み、坂井が手配したキャンプ場へと向かった。彼らは車内で和気あいあいとした会話を楽しみながら、目的地へと向かっていた。
「さて、今日は何が待ってるかな?前回のバーベキューのようなハプニングが起きないといいけどな」コタローが冗談めかして言うと、坂井が後部座席から身を乗り出してきた。
「おいおい、コタロー。あの時は楽しかったじゃないか!でも、今回はもっとスムーズにいくさ。何といっても俺が計画したんだからな」坂井は自信満々に答えた。
「それが逆に不安なんだけど…」玲奈が苦笑しながら言うと、彩花が笑いをこらえながら話に加わった。
「でも、坂井さんの計画にはいつも驚かされますよね。前回もあの状況で焼肉を諦めなかったのは、ある意味すごいです」
「でしょ?俺の情熱は誰にも負けないんだ。特に食べ物に関してはな!」坂井は誇らしげに胸を張った。
「それは分かってるけど、今回は平和に過ごしたいところだな…」コタローは少し心配そうに言ったが、彩花は微笑みながら彼を見つめた。
「大丈夫ですよ、コタローさん。何かあっても、皆で協力すればきっと乗り越えられますから」
「そうだな…彩花さんがいるなら、俺も安心だよ」コタローは照れくさそうに微笑んで答えた。
「おいおい、ここでイチャつくんじゃないぜ、コタロー!俺もいるんだからな!」坂井が茶化すように言うと、玲奈もそれに続いた。
「そうですよ、コタローさん。坂井さんにも少しは気を使ってあげないと」
「いやいや、別にイチャついてるわけじゃないって!」コタローは慌てて否定したが、坂井と玲奈の笑い声は止まらなかった。
車内はそんな軽口の応酬で盛り上がり、あっという間に目的地に到着した。キャンプ場は広々としており、木々に囲まれた自然豊かな場所だった。彼らは早速テントを設置し、火を起こして夕食の準備を始めた。
「さて、今回は俺がシェフを務めるからな。彩花さんはスイーツ担当ってことでよろしく!」坂井が意気揚々と宣言すると、彩花は笑顔で頷いた。
「了解しました。じゃあ、私はデザートの準備をしますね」
「頼りになるぜ、彩花さん!ところでコタロー、お前は何をするんだ?」坂井が尋ねると、コタローは少し考え込んでから答えた。
「うーん、じゃあ俺は…火の番でもしておくよ」
「火の番かよ!もっと他にやることあるだろ?」坂井が笑いながら言うと、コタローは苦笑いを浮かべた。
「だって、料理は坂井に任せたほうがいいだろうし、彩花さんのスイーツには敵わないしさ。せめて、みんなが美味しく食べられるように火を守るのが俺の役目ってことで」
「まあ、それも重要な役割だよね」玲奈がフォローすると、坂井も納得したように頷いた。
「確かに、火の管理は大事だ。じゃあ、コタローには火の番人を任せるか」
その後、彼らはそれぞれの役割をこなしながら夕食の準備を進めた。坂井が得意げに肉を焼き、彩花が手際よくデザートを作り、玲奈はサラダや飲み物を用意していた。そしてコタローは、黙々と火を見守りながら皆の様子を見守っていた。
「うん、いい感じに焼けてるぜ。そろそろ食べるか?」坂井が嬉しそうに言うと、皆が集まり、テーブルに座った。
「いただきます!」皆で声を合わせ、食事が始まった。
「坂井さん、今回もお肉美味しいですね。やっぱり焼き方が上手です」彩花が感心しながら言うと、坂井は得意げに笑った。
「だろ?俺の焼き加減は絶妙なんだ。これも日頃の練習の賜物さ」
「日頃って…どこでそんなに練習してるんだ?」コタローが興味津々で尋ねると、坂井は少し誇らしげに答えた。
「実は、家でも結構焼肉やってるんだ。俺の家はベランダが広いから、そこでよくバーベキューをするんだよ」
「そりゃあ、プロ並みに上手くなるわけだ」玲奈が納得したように頷いた。
「それにしても、彩花さんのデザートも本当に美味しいですね。これ、どうやって作ったんですか?」コタローが感心しながら尋ねると、彩花は少し照れくさそうに笑った。
「ありがとうございます。これは特別なレシピじゃないんですけど、材料にこだわって作ってみました。あとは、みんなに美味しく食べてもらえるように、愛情を込めて…ってところですかね」
「なるほど、愛情のスパイスが効いてるんだな。これは真似できそうにないな」コタローは微笑みながら答えた。
「愛情か…それは彩花さんらしいな。でも、これだけ美味しいデザートが食べられるなら、俺たちも頑張って作った甲斐があるってもんだ」坂井が満足そうに言うと、玲奈も同意した。
「本当にそうですね。これからも一緒に楽しい時間を過ごせるといいですね」
こうして、彼らは自然の中で和気あいあいとした時間を過ごし、食事を楽しんだ。彩花とコタローの距離も少しずつ縮まっていくのを感じながら、彼らはこれからの時間がさらに楽しいものになることを予感していた。