転4 危ないバーベキュー ほのぼの
青空の下、緑の草原が広がる中で、バーベキューは順調に進んでいた。坂井が手配した食材も豊富で、皆が楽しそうに肉を焼いたり、彩花の手作りスイーツを味わったりしていた。しかし、次第に太陽が傾き、空が少しずつオレンジ色に染まり始めた頃、予想もしなかった出来事が彼らを襲った。
「おい、坂井。あそこの山の方、何か煙が上がってないか?」コタローが突然、遠くの山を指差して言った。
「え?どれどれ…」坂井が目を凝らして見ると、確かに山の中腹から黒い煙がもくもくと上がっているのが見えた。
「やばいな、あれって…もしかして火事か?」坂井の顔が少し青ざめる。
「うわ、なんだか不穏な予感がしてきたぞ…」玲奈が少し不安そうに言うと、彩花もその様子を見て不安げな表情を浮かべた。
「ちょっと待って、ここに火が近づいてきたらどうする?逃げるべき?」彩花が真剣な表情で尋ねる。
「まずいな…このままじゃ危険だ。早く車に戻って避難した方がいいかも!」コタローが冷静に判断するが、坂井は焦り気味に言った。
「でも、せっかくのバーベキューだぞ!まだ食べてない肉がいっぱい残ってるんだ!」坂井がバーベキューセットを見つめる。
「いや、坂井。今は肉どころじゃないだろ!命がかかってるんだから、さっさと片付けて逃げよう!」コタローが必死に坂井を説得する。
「わかった、わかった!でも、せめてこの肉だけは…!」坂井は網の上の肉を最後の力でひっくり返しながら、後ろ髪を引かれるように片付け始めた。
「もう、坂井さんってば、食い意地が張ってるんだから…」玲奈が呆れつつも、荷物をまとめるのを手伝い始めた。
その間にも、煙はどんどん近づいてきて、風に乗って焦げ臭い匂いが漂い始めた。
「急ごう、煙がどんどん迫ってきてる!」彩花が少しパニック気味に声を上げる。
「みんな、落ち着け!こんな時こそ冷静に、効率的に行動するんだ!」コタローがリーダーシップを発揮しようとするが、心の中では彼も焦りを感じていた。
やっとのことで荷物をまとめ終えた彼らは、慌てて車に乗り込んだ。坂井が運転席に座り、エンジンをかけたが、なぜかエンジンがかからない。
「え、嘘だろ?こんな時に限ってエンジントラブルかよ!」坂井が焦りながらキーを回し続けるが、エンジンは頑なに動かない。
「坂井さん、早くして!煙がもうすぐそこまで来てるよ!」玲奈が恐怖に駆られて叫ぶ。
「わかってる、わかってるって!でも、こいつが言うこと聞かないんだ!」坂井は必死にキーを回すが、エンジンは無反応。
「これはまずいな…他に何か逃げる手段を考えないと!」コタローが冷静に状況を把握しようとするが、その時、彩花が何かを思い出したように叫んだ。
「そうだ!私、山登りが趣味で、非常用の装備を持ってきてたんです!もし車が動かないなら、それを使って逃げましょう!」
「非常用の装備!?そんなものがあったのか!」坂井が驚いたように彩花を見る。
「ええ、でもロープやクライミングギアくらいしかないんですけど…それでも何か役に立つかもしれません!」
「よし、彩花さんの装備を使って、山道を登って煙から離れるんだ!今は他に選択肢がない!」コタローが素早く指示を出す。
彼らは彩花のリュックから装備を取り出し、急いで山道を登り始めた。煙は背後から迫ってきており、風が強くなり始めたことで、彼らは一層焦りを感じていた。
「坂井さん、ちゃんとついてきてくださいね!そっちが荷物を持つのが得意でしょう?」玲奈が息を切らしながら、後ろを振り返る。
「まかせとけ!こういう時こそ、俺の腕力が役に立つんだからな!」坂井は大きな荷物を背負いながらも、気合を入れて登り続けた。
彩花は先頭に立って、クライミングギアを使いながら慎重に山道を進んでいく。コタローはその後ろをぴったりとついていき、時折彩花に指示を出しながら進んでいた。
「もう少しで頂上だ!そしたら煙からは逃れられるはずだ!」コタローが励ましの声をかけると、皆がその声に奮起して一層力を振り絞った。
ようやく山道の頂上にたどり着いた時、彼らは息を切らしながらも、達成感に包まれていた。下を見下ろすと、煙が山のふもとを覆い尽くしているのが見えた。
「なんとか逃げ切れたみたいだな…みんな無事でよかった!」坂井が大きく息を吐きながら言った。
「本当に危なかった…でも、彩花さんのおかげで助かりました。ありがとう!」コタローが感謝の言葉を伝えると、彩花は少し照れくさそうに微笑んだ。
「いえ、皆さんが冷静に行動してくれたおかげです。私一人だったら、こんなにうまくいかなかったと思います。」
「そうだな、みんなで力を合わせて乗り切ったんだ。これは俺たちのチームワークの勝利だ!」坂井が誇らしげに言うと、玲奈も同意した。
「本当にそうですね。これからも、何があっても皆で乗り越えていける気がします。」
こうして、彼らは危機を乗り越え、さらに強い絆を感じることができた。自然の脅威を前にしながらも、コミカルな掛け合いとともに、彼らは一層の仲間意識を深めることになったのだった。