転9 また危険なキャンプ 終幕
クマが去り、焚き火の周りに集まった一同は、ようやく無事を喜び合っていた。しかし、その中で坂井だけは、別の恐怖に直面していた。クマとの対峙中、極度の緊張から、思わず漏らしてしまったことに気づき、全身に冷や汗が流れていた。
「なんだ…この冷たい感覚…いや、まさか…」
坂井は心臓がバクバクと鳴り、冷や汗が止まらなかった。恐る恐る自分の腰あたりを触れ、その感触が単なる汗ではないことを確認してしまったのだ。
「嘘だろ…こんな時に、俺が…?いや、嘘であってくれ!これは汗だ、そうに決まってる!緊張でいっぱい汗をかいただけだ!」
しかし、現実は甘くない。坂井は次第にその冷たさが、どう考えてもただの汗ではないことに気づいてしまう。彼は心の中で必死に否定しようとするが、どうしても認めざるを得ない事実に直面する。
「いや、待てよ…これはただの…まさか…いや、でも、どうしてこんなことに…俺が、こんな状況で、まさか、いやいや、これは夢だ!夢に決まってる!」
心臓の鼓動が速くなる。冷や汗は止まらない。まるで頭の中で警報が鳴り響いているかのように、坂井は自分が現実に何をしてしまったのかを理解し始める。
「そうだ、これは悪夢だ!そうに決まってる!…いや、どう見てもこれは現実だ。どうしてこんな時に限って…いや、クマだって現実だったんだから、これも現実に決まってる!くそ、なんてこった…」
坂井は内心で絶望に近い感情を抱きながらも、どうにか冷静を保とうとする。しかし、頭の中では様々なシナリオが浮かんでは消えていく。
「もしこの事実がバレたら…みんなの前で漏らしたなんて、もう俺の人生は終わったも同然だ!クマを撃退したヒーローから一転、うんこ漏らしの坂井ってあだ名で一生を過ごすのか…それは無理だ、無理だ!」
その時、ふと周りの視線を感じて、坂井はさらに動揺を隠せなくなった。皆が笑顔で焚き火を囲んでいるが、坂井にはその笑顔が恐ろしいものに見える。まるで自分の秘密が今にも暴かれるような気がしてならない。
「誰も気づいてないよな…?いや、誰かが気づいたらもう終わりだ!これ以上近づかれたら、においでバレるんじゃないか…いや、お願いだから誰も気づかないでくれ!頼む、誰も俺に話しかけないでくれ…!」
坂井は心の中で必死に祈り続けるが、その祈りが天に届くことはなかった。突然、隣に座っていた玲奈が彼に話しかけてきた。
「坂井さん、大丈夫?なんだか顔色悪いよ?」
その一言が、坂井の心を鷲掴みにした。顔色を指摘された瞬間、彼は自分が震え始めていることに気づいた。
「顔色って、え、まさかバレてるのか?いや、そうじゃない!これはただの心配だ…でも、いや待て、まさかにおいが…え、どうしよう、どうしよう…!」
坂井は心の中でパニックを起こしながらも、何とか平静を装うために必死に笑顔を作る。
「あ、ああ、ちょっとクマのことで緊張しちゃったみたいでさ…でも、大丈夫だから、ありがとう。」
しかし、その笑顔は引きつり、言葉は震えていた。坂井の頭の中では、ありとあらゆる最悪のシナリオが次々と浮かんでくる。
「いや、これ本当に大丈夫なのか?この場で漏らしたことがバレたら、もう俺は終わりだ…でも、いや、今ここで落ち着くんだ、冷静になるんだ俺…そう、深呼吸して、落ち着いて…いや、落ち着けるわけないだろ!」
その時、ふとコタローが隣に座り、坂井の顔をじっと見つめた。坂井はさらに動揺し、「まさかコタローにバレたのか?」と焦り始める。
「コタロー…お前、何か言いたげな顔してるけど…いや、まさかバレたのか?でも、どうして今気づいたんだ…俺、何かやっちゃったか?」
しかし、コタローはただ微笑み、そっと坂井の耳元で囁いた。
「坂井、何があったかは聞かない。でも、これを腰に巻いて隠しておけ。俺がカバーするから、何とかやり過ごせ。」
その言葉に、坂井は一瞬で胸をなでおろした。コタローが気づいていることがバレたとしても、それが親友であることに坂井は救われた。
「コタロー、お前…本当にありがとう…でも、いや待て、これを腰に巻いて隠すって?そんな簡単にうまくいくのか?でも、今はこれしかない…」
坂井はコタローが差し出した上着を受け取り、震える手で腰に巻きつけた。心臓がバクバクと鳴り響いていたが、親友の助けに少しだけ安心感が広がっていった。
「コタロー…お前、気づいてるんだろうな…でも、何も言わないでこうして助けてくれるなんて…いや、助けてくれるのはありがたいけど、これで本当に大丈夫なのか?俺、本当に隠せてるのか?」
坂井は心の中で感謝の気持ちと不安を抱えながら、何とか冷静を装っていた。しかし、頭の中ではまだ最悪のシナリオが次々と浮かんできていた。
「もしこの場で歩いたら、ズボンの下から落ちるんじゃないか?いや、でもここで立ち上がらなきゃ怪しまれる…でも、もし立ち上がって落ちたら、俺の人生は完全に終了だ!いや、でも、今のところバレてないはずだ…」
コタローは坂井の表情をチラリと確認し、彼が少し落ち着いたのを見てから、さらに皆の注意をそらすために別の手を打つことにした。
「さて、焚き火もいい感じだし、少し休憩しようか。ちょっとこの辺りで座って、落ち着こう。」
坂井は頷き、コタローに従ってその場に留まった。「あ、あのさ、俺たちちょっと話してたんだけど、ここで少し休んでみない?その方がみんなも落ち着くしさ。」
その言葉に誰も疑問を持たず、「いいね、それ賛成!」と手を振りながら同意してくれた。
コタローと坂井はその場に座り込んだが、坂井はまだ心の中で不安と戦っていた。
「これで本当に大丈夫なのか?いや、でもコタローがいるから何とかなるはずだ…いや、でも万が一、何かあったらどうする?落ち着け、坂井…今は落ち着いて、何も考えずにいよう…」
しかし、突然、玲奈が坂井に近づいてきた。坂井の脳内で再び警報が鳴り響く。
「やばい!やばい!近づかないでくれ!今、俺に近づいたら…!」
玲奈は何かに気づいたのか、不安そうに坂井を見つめた。「坂井さん、さっきのクマ、本当に怖かったよね。あなたがいてくれて、私たち助かったよ。ありがとう。」
その言葉に感謝の気持ちを抱くべきなのに、坂井の頭の中はそれどころではなかった。彼の心臓はさらに激しく鼓動し、冷や汗が再び噴き出す。
「やめてくれ、やめてくれ、そんなに近くに来ないでくれ!バレる、絶対にバレる!お願いだから、もっと離れてくれ…!」
坂井は必死に微笑みながら、「いや、あの、えっと、ありがとう。でも、今は少し…その、ちょっと疲れちゃって…」と答えた。彼の言葉は震えていたが、玲奈は気づかずに微笑んだ。
「そっか、ゆっくり休んでね。無理しないでね。」
その瞬間、坂井は「助かった!」と心の中で叫んだが、その安堵も束の間だった。玲奈が離れる際に、少し振り向いて「でも、本当に坂井さん、大丈夫?」と再び問いかけてきた。
「また来た!また来た!なんで戻ってくるんだよ!お願いだから、これ以上俺に近づかないでくれ…!」
「う、うん、もちろん大丈夫!全然問題ないよ!」と坂井は必死に答えたが、内心では「これ以上話しかけられたら、絶対にバレる…どうしよう…」という不安が募るばかりだった。
そこで、コタローがさりげなく話題を変える。「玲奈、ありがとうな。お前がいてくれて、俺たちも心強かったよ。今はみんなで一息ついて、ゆっくりしようぜ。」
その言葉に玲奈は「うん、そうだね」と頷き、ようやく坂井から少し距離を取ってくれた。
坂井は内心で「コタロー、ありがとう!」と叫びながらも、「まだ終わってない、油断するな、俺!」と自分に言い聞かせていた。
その後、坂井はできる限り動かずに、場の空気を壊さないように振る舞った。コタローが話を引っ張ってくれたおかげで、みんなが注意をそらし、坂井の「事故」に気づく者はいなかった。
「これで何とか乗り切った…でも、まだ安心できない…最後まで気を抜くな、俺!」
その夜、坂井は人生最大の危機を乗り越えたと感じたが、それもすべてコタローの助けがあってのことだった。彼はコタローに心の中で感謝しつつ、「次からはこんなことがないように、気をつけよう…」と固く誓った。
そして、ふと頭の中にある考えが浮かんだ。それは…「オムツ」。
「いや、待て、オムツだ…そうだ、オムツを履けばこんなことにはならなかったんじゃないか…?」
その考えが浮かんだ瞬間、坂井の心は軽くなった気がした。あの漏らした感覚を思い出し、その時の恐怖を再体験しながら、彼は自問した。
「どうして今まで気づかなかったんだ?オムツを履いていれば、こんなに焦ることはなかったのに!それに、もし次回またこんな緊張する状況が訪れたらどうするんだ…?いや、オムツさえあれば、その恐怖から解放されるんじゃないか?」
オムツの可能性に気づいた瞬間、坂井の心の中で革命が起こった。
「そうだ、オムツだ!オムツなら俺を守ってくれる…これで安心だ!いや、むしろオムツを履いていれば、どんな緊急事態があっても落ち着いて対応できるんじゃないか?これは…まさに俺に必要なアイテムだったんだ!」
坂井はその考えを抱きしめるように心の中で熱く語り続けた。
「次回からは、必ずオムツを履こう…これで俺は無敵だ!オムツさえあれば、もうどんな緊急事態が起きても怖くない!オムツ…なんて素晴らしい発明なんだ…俺はこれにもっと早く気づくべきだった!」
彼の心は完全にオムツに支配され、その素晴らしさを語り尽くすことができないほどになっていた。
「オムツは俺の救世主だ…次からはこれさえあれば、俺はどんな時でも冷静でいられる!ありがとう、オムツ!これで俺の未来は明るいぞ!」
そして夜が更けていく中、坂井の「秘密」はコタローの機転と友情によって、最後まで誰にも知られることなく、無事に朝を迎えることができたのだった。そして、彼は新たな決意を胸に抱き、「次からはオムツを履いていよう」と固く心に誓ったのだった。
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<恋する乙女の奮闘記>桜井玲奈編
クマが去り、焚き火の周りで無事を喜び合う一同の中で、玲奈は何度も坂井の方に目をやっていた。あの恐ろしいクマと対峙し、みんなを守ってくれた坂井の姿は、彼女の中で大きく輝いて見えていた。
「坂井さん…あの時、本当に頼りになったよね。大きな体でみんなを守ってくれたし、怖がらずに立ち向かう姿…あれはすごかった…」
玲奈は胸の奥でドキドキと高鳴る感情を抑えきれずにいた。普段は軽いノリで冗談ばかり言っている坂井が、あんなに勇敢な姿を見せるなんて、彼女にとっては予想外の出来事だった。
「本当に…あんなに頼りになるなんて…ちょっと意外だったけど、なんか…格好良かったな…」
しかし、同時に玲奈は不安も抱えていた。坂井があまりにも落ち着きがない様子に見えたからだ。いつもならば自信満々で笑っているはずの彼が、どこか焦っているように感じた。
「どうしたんだろう…坂井さん、いつもと違う…なんか、すごく落ち着かない感じがするけど…もしかして、まだクマのことを引きずってるのかな?」
玲奈はその不安を拭いきれずに、思わず坂井の方に近づいていった。
「坂井さん、大丈夫?なんだか顔色悪いよ?」
自分でも驚くほど心配の言葉が自然に出てしまった。今まで坂井にこんな風に心配したことはなかったが、今の彼の様子が気になって仕方がなかったのだ。
「顔色悪いって…本当に何かあったのかな?まさか、クマとの対峙で何か深刻なことがあったとか…」
心配の念が膨らむ中、坂井は引きつった笑顔を見せながら「ちょっとクマのことで緊張しちゃったみたいでさ…でも、大丈夫だから、ありがとう」と言った。しかし、その笑顔が不自然で、彼の声も少し震えていたことに玲奈は気づいた。
「え…本当に大丈夫?なんか、無理してる感じがするんだけど…でも、これ以上聞いたら迷惑かな…?」
玲奈は坂井が気丈に振る舞おうとしている様子に、さらに心配が募ったが、これ以上踏み込んでいいものか迷っていた。
「でも、坂井さんが無理してるなら、もっと支えてあげたいな…あれだけ私たちのこと守ってくれたんだから、今度は私が支えなきゃ…」
そう思いつつも、玲奈はもう一度「でも、本当に坂井さん、大丈夫?」と尋ねた。坂井が無理をしているように見えた彼女は、どうしてもそのことが気になってしまう。
「これ以上聞いてもいいのかな…でも、何かあったらどうしよう…私がもっと聞いてあげなきゃダメなのかな…?」
しかし、その時コタローがさりげなく話題を変え、玲奈の心配を和らげてくれた。彼が「玲奈、ありがとうな。お前がいてくれて、俺たちも心強かったよ。今はみんなで一息ついて、ゆっくりしようぜ」と言ってくれたことで、少しだけ安心した。
「そうだね、今は少しみんなで落ち着こう…坂井さんも、少し休めるといいな…」
玲奈はコタローに感謝しつつ、少し距離を取ったが、心の中ではまだ坂井のことが気になって仕方がなかった。
「坂井さん、なんでそんなに焦ってるんだろう…でも、今は無理させちゃいけないよね…もう少し様子を見て、また何かあったら手を差し伸べよう…」
そう思いながらも、玲奈の中では坂井への感情が大きく膨らんでいった。
「坂井さん、こんなに頼りになるんだ…普段の坂井さんとは違う一面を見ちゃったな…もっと彼のことを知りたいな…」
心の中で少しずつ芽生え始めた感情に戸惑いつつも、玲奈は「坂井さんの力になりたい」という気持ちを強く感じていた。そして、その気持ちが、これからの彼女の行動に影響を与えていくことになるのだった。




