転8 また危険なキャンプ 坂井編
坂井誠がクマを前にして、勇敢に立ち向かう姿を見せた瞬間、彼の内心はまるでジェットコースターのように揺れ動いていた。外見上は自信満々でクマに向かって突進しているように見えたが、その実、彼の心の中では恐怖と不安が大混乱を引き起こしていた。
「やばいやばいやばい!マジでクマじゃん!どうすんだよ、俺!逃げ出したい!めっちゃ逃げ出したい!でも…でも、俺がここで逃げたら、みんなどうなるんだ!?」
坂井の心の中では、逃げ出したいという衝動がどんどん膨らんでいた。クマが一歩ずつ近づいてくるたびに、坂井の心臓はまるで爆発しそうな勢いでドキドキしていた。
「お願いだから誰か助けてくれ!なんで俺がこんなことに!?俺、別にクマと戦うために生まれてきたんじゃないって!まさか、アクション映画のヒーローみたい、って言ったからこんなことになったのか!?誰か助けてくれ!全然違うんだよ!俺、普通の人間なんだから!」
坂井は心の中で泣き言を言いながらも、彼の身体はみんなの前に立ちふさがるように動いていた。体格の良さが災いしてか、「俺が守らなきゃ」というプレッシャーが彼を押し潰しそうになっていた。
「くっそ、なんで俺だけこんな体がでかいんだよ!もうちょっと小さければ、コタローみたいに隠れて逃げられたのに…でも、ここで逃げたら、彩花さんにも玲奈にもバカにされる…いや、それどころか、もう二度と男として見てもらえないかも!」
この時、坂井の脳裏には自分が逃げ出した場合の最悪のシナリオが次々と浮かんでいた。彩花と玲奈に見限られ、コタローにさえも「なんだ坂井、意外と情けない奴だったんだな」と思われる未来。それは坂井にとって何よりも耐え難いものであった。
「いや、待てよ…俺は坂井誠だ!ここで逃げたら一生の恥だ!男として、ここは俺が踏ん張るしかない!」
彼の内心は恐怖と使命感の狭間で揺れ動いていた。逃げたい気持ちと、みんなを守りたいという責任感が入り混じり、彼の頭の中はぐるぐると回っていた。
「もうどうにでもなれ!クマさん、お願いだから俺を食べないでくれ!でも…でも、俺はみんなを守るためにここに立ってるんだ!これが俺の運命なんだ!そうだ、ヒーローは泣かない…ヒーローは強いんだ!」
坂井は必死に自分に言い聞かせながら、震える手で焚き火の棒を握りしめた。その手は汗で湿り、棒が滑りそうになるが、彼は何とか踏ん張った。
「お願いだから、俺の震えがバレないように…みんな、俺を見てるんだ。頼むから気づかないでくれ!俺、今にも泣きそうだけど、そんなの絶対見せられない!」
坂井は自分を奮い立たせ、クマに向かって棒を振りかざした。その瞬間、クマが一歩退いたのを見て、彼は内心で「やった!」と叫んだが、それと同時に、また別の恐怖が押し寄せてきた。
「これで終わりじゃないよな…次にどう動くかなんて全然分からない!どうしよう、次はどこを攻撃すればいいんだ!?いや、そもそも攻撃しなきゃいけないのか!?クマさん、どうか帰ってくれませんか?お願いだから戦わないで!」
心の中で絶叫しつつも、坂井は外見上は冷静を装っていた。彼の心の中での葛藤はピークに達していたが、外にいるクマを追い払うために自分の役割を果たすしかなかった。
「もうどうにでもなれ!これが最後だ!俺は坂井誠、ここで決めるしかないんだ!」坂井は心の中で叫びながら、再び棒を振り上げ、クマに向かって突進した。
奇跡的にも、クマはそれ以上追いかけてこなかった。怯んだクマは、坂井の勢いに押されてその場から逃げ出したのだ。
「お…俺、やったのか…?」坂井は信じられない思いでクマが去っていく姿を見つめた。心の中でようやく安堵の息をつきながらも、まだ緊張が解けないまま、皆の方を振り返った。
「さ、坂井さん、本当にすごかったです!」彩花が感激の面持ちで言った。
「そ、そうだろう?」坂井はなんとか平静を装って答えたが、心の中では「もう二度とこんなことはしたくない!勘弁だぜ!二度はできないからな!」と、強く思っていた。
こうして、坂井は恐怖に打ち勝ち、みんなを守るという使命を果たした。しかし、その裏側には彼の必死の葛藤と、自己奮闘があったのだ。




