8 近隣地域の者が退魔師を呼ぶけども
「これは────」
漂ってくる気配。
それを感じ取った退魔師は怖気をおぼえた。
異様な霊気。
巨大で広大なものがすぐそこまで迫っている。
幸い、あちこちに存在する神聖な場所やものが阻んではいるが
直接触れれば命がなくなる。
それが分かるほど異質で強力な存在があらわれている。
「なんでこんな事に」
話を聞いて現地の近くまでやってきたが。
一人でどうにかなるような状況ではなかった。
一般的なお祓いや除霊の段階などとっくに超えている。
相手は強力な妖怪・物の怪。
あるいは神仏に匹敵するほどの霊威・霊格を備えている。
それほど巨大で広大な霊気だ。
退魔師一人でどうにかなるわけがない。
「あの、どうなんでしょう」
不安げな者達が退魔師に尋ねる。
今回、退魔師に依頼をした者達だ。
近隣の県や市町村で不審死が続いている。
原因がわからないこの出来事を見て、もしかしたら心霊現象かもしれないと思ったのだ。
そんな彼等は伝手をたどって退魔師に依頼をした。
何が起こってるのかを調べて欲しい。
出来れば、問題を怪傑して欲しいと。
仕事ならばと退魔師は引き受けた。
そして現地にやってきたのだが。
「無理です……」
呆然と答えを呟いた。
「私に解決出来るような問題じゃありません」
尋ねた依頼者達は、顔を青くしてうなだれていった。
隣の県で起こった大量死亡事件。
それが自分たちの町にまでおよんできて、在住の者達は恐れおののいた。
警察や科学機関の調査は続いてると聞くが、いまだに原因不明。
事がここにおよぶに至り、彼等は自分たちで動く事にした。
すなわち、
「これは祟りではないのか?」
というオカルト・神秘・心霊現象の可能性に至り、
「なら、お祓いをしてみないか」
という非科学的な対策に出る事にした。
とはいえ、半信半疑ではある。
本当に祟りなのかどうか。
それすらも分からない。
だが、いっそそんな事にすがって見るのも良いかもしれない。
他に方法があるわけでもなし。
こんな考えにより、神主や僧侶などにあたっていった。
とはいえ、宗教に携わってる者達全員が霊能者というわけでもない。
なかには、「私には無理です」と断る者達もいた。
たんなるご祈祷ならともかく。
心霊現象の解決など全員が出来るわけでもない。
ただ、伝手はある。
特殊な能力を持つ者達とのつながりを持つ者もいる。
そこはこういった業界・界隈の強みである。
その伝手をたどって退魔師に連絡が届いた。
呼ばれた退魔師は、死の恐怖が近づく町へとやってきた。
なのだが。
結果は既に述べた通り。
退魔師ではどうにもならないほど相手は強い。
それこそ神仏といえるほどに強力な存在だ。
人間でしかない退魔師にどうにかなるものではない。
「今すぐここから逃げてください」
有効な対応はこの程度だ。
かなわないなら逃げる。
安全な所に非難する。
他に方法はない。
だが、どこに逃げるというのか?
逃げてもいずれは追いつかれる。
この調子で霊気の範囲がひろがれば、いずれ住める場所はなくなる。
結局は一時しのぎにしかならない。
それでも、少しでも生き残りたいならそうするしかない。
とはいえ、何もしないというつもりもない。
脅威を退ける事は出来なくても、出来るかぎりの事はしたい。
退魔師にも維持や矜持がある。
何より、困ってる人を放置できるほど冷淡にもなれない。
仕方ないと割り切りも出来ない。
「やれるだけの事はやってみます」
そういって退魔師は己の能う限りを尽くす事にした。
その姿に依頼した者達は頭を下げた。
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【よぎそーとのネグラ 】
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