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6 結果が出ない事をせめらても、嫌気が募るだけ

「聞き込みも出来ず、手がかりもない。

 それで帰ってきたと」

 半日の捜査を終えて帰った警察官を出迎えたのは、上司の嫌味だった。

 捜査が進まない事を理由に貶している。

 そこに合理性や適切さはない。



 上層部から、更には民衆からの突き上げのためではある。

 異様な出来事への解決を望む声。

 そして、解決出来ませんでしたとはいえない組織の体面。

 これらが捜査にあたってる者達への貶しになっている。



 無理で無茶としか言いようがない。

 目撃情報を得ようにも、そもそも目撃者たる者達が死んでいる。

 生き残ってる者達は少なく、話を聞き出す事も難しい。

 おまけに捜査にかけられる時間は限られている。

 現地に24時間以上の滞在は死を招く。

 捜査は半日までと決められており、往復の時間を別にすれば、実際に捜査できる時間はほとんどない。

 そんな短時間で成果があがるわけもない。

 たとえ時間があったとて、結果は変わらないが。



 なにせ、相手は科学が通じない存在である。

 通常の捜査手法では解決できない。

 いっそ、オカルト方面からの考察の方がまだしも正解に近い。

 これに気付ければまた違うのかもしれないが、そんな発想が出来る者などいるわけもない。

 仮に提案しても「バカを言うな」で終わりである。

 なので、捜査も調査も一向に進まない。



 つまり、捜査の全ては空回りしている。

 成果など上がりようがない。

 だが、そんな事が許されるわけもない。

 結果として、「警察は何をやってる」という声が民衆から上がり。

 それを受けた警察上層部が「はやく成果をあげろ!」と下っ端を怒鳴りつけ。

 巡り巡って実際に捜査や調査に出てる者達への怒鳴り声になっていく。

 あるいは陰険なつるし上げに。



 さんざん歩き回り、死ぬ可能性のつきまとう時間制限を強いられて。

 それでねぎらわれる事もなく、ケチをつけられる。

 これでやる気を保てる者などいるわけもない。

 一部、例外はいるが、例外は基準にならない。

 誰もが嫌気をおぼえて適当な作業をするようになる。

 問題の解決よりも、鬱陶しい叱責を適当に受け流す事に邁進するようになる。



 無駄な小言が終わってから雑務に手を付ける。

 気分が滅入ってる状態なので作業効率は大きく落ちる。

 もとより成果らしい成果もなく、報告出来るような事もないのだが。

 それでもある程度の事は書いておかねばならない。

 面倒な書類作業が余計に気持ちを落ち込ませる。



 書く内容に変わりもない。

 行く場所が違うだけで、基本的に結果は同じ。

 誰もいないから聞き込みも出来ない。

 何があったのかも分からない。

 目撃者もいない。

 現場にいる人間のほとんどは死んでるのだから。



 生存者に話を聞こうにも、どこに居るのかも分からない。

 それすらもろくに把握出来てないのだ。

 死亡が確認された者を戸籍と照らし合わせれば良いのだろうが。

 あまりにも死亡者が多すぎて、確認作業が進んでない。

 いずれ結果は出るだろうが、まだ完全に作業は終わってない。



 こんなわけで、生存者を見つけるのも難しい。

 おまけに、どういうわけか生存者は警察などとの接触を避けてる。

 それこそ広報車などのスピーカーを使って、「警察です、どなたかいらっしゃいませんか」と呼びかけたりもしてるのだが。

 応えて出てくる者がほとんどいない。



 もしかしたら、本当にそこにいないのかもしれない。

 だが、誰一人反応を示さないのもおかしなものだ。

 一人くらいは顔を見せても良さそうなものだが。

 そんな一人もいないのだ。



 それだけ生存者が少ないのか?

 数少ない生存者が警察などを避けてるのか?

 だとしてその理由は何なのか?

 考えても答えは出ない。

 本人に出会って聞くまでは。



 だが、どうやって出会えば良いのか?

 どこに居るのかも分からない、自ら出てこようともしない。

 そんな者達とどうやって接触すれば良いのか?

「…………どうしろってんだよ」

 解決策も見つからず、ただ途方にくれる。

 出来るのは、中身のない報告を書くだけ。

 意味があるのかと書いてて思ってしまう。



 そんな報告書を提出し。

 次の日に向けて帰宅する。

 今日と同じ明日がやってくると思いながら。

 ため息を何度も吐き出していく。

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