5 無駄と知らずに無駄な事をしているのだから、成果も結果も出るわけがない
「どうなってんだよ」
名前だけの秋の中、汗だくになりながら捜査を続ける警察官。
残暑どころか夏の暑さがそのまま続く10月の空の下。
汗だくになりながら現地で情報を得ようとする。
危険と隣り合わせになりながら。
現地入りすると死ぬ。
そんな話が捜査・調査関係者の間で持ちきりである。
実際、死亡者が発生した地域に向かった者達の多くが死んでいる。
基本的に24時間、丸一日現地にいた者が死んでいる。
なので、捜査や調査は半日だけ。
それ以上は厳禁となっている。
これが決まって以降、現地で死ぬ者は皆無となった。
この事からも、現地に何かがあるのは確実だった。
だが、それが何なのかが分からない。
長時間吸い込むと危険な物質が空気の中に紛れてるのか、とも言われている。
だが、調べた限りでは成分に異常は見られない。
その他、可能な限り、思い付く限りを調べてみてもおかしな物は見つかってない。
この死亡事故も異様さを物語る理由になっている。
そんな危なっかしい場所に出向いてるのだ。
それだけで精神が削られていく。
一刻も早くこの場から逃げだしたい、そんな思いを警察官は抱いていた。
その為にも少しは成果をあげたいのだが。
「これじゃあなあ……」
周りを見渡してため息を吐く。
人がいないのだ。
通りを歩く者も。
車を走らせる者も。
人っ子一人いない。
これが閑静な住宅地ならまだ分かる。
そうそう表に人は出てない。
だが、警察官がいるのは繁華街だ。
駅前でもっとも賑わっていた場所だ。
今、ここには誰もいない。
日中であっても必ず人がいた場所なのにだ。
ここで働いてる者や、買い物客、遊びに来た者達。
そういった者達が必ずいたはずだ。
更に言うなら、駅員も。
しかし、今は誰一人いない。
ここに集っていた者達の多くは死んだ。
鉄道も人が死ぬならばと運行を止めている。
当然、駅員も撤退させている。
こんな場所で聞き込みなど出来るわけがない。
少しでも現地の情報を手に入れたいのだが。
聞き込める人間がいないのだからどうにもならない。
大量に人が死んだのだから、これも当たり前ではあるのだが。
それでも、生存者が皆無というわけではない。
そんな彼等から現地の情報を少しでも聞ければと思ってるのだが。
それが難しい。
もっとも、生き残りに話が聞けても意味があるわけでもない。
数少ない生き残りも、「分からない」というのだから。
それもそうだろう。
科学的な調査をしてる者ですら何も解明出来なかったのだ。
素人の一般人が何かを知ってるわけがない。
せいぜい、彼等が見たその時の様子を聞けるだけだ。
その程度なら既に警察も行っている。
それでも、今まで知らなかった何かがあるのではないか?
そんな考えから生き残りからの聞き取りは行われていた。
警察がまだ出会ってない者もいるのだ。
それらが何かを知ってる可能性もある。
たとえそうでなくても、話を集める事で見えてくるなにかもある。
その為にも、少しでも多くの情報を集めねばならない。
なのだが、これが出来ない。
人に会おうにもそれが出来ない。
県の人口が10分の1を下回ってるのだ。
人に会えなくなっても当然だ。
こんな状況である。
警察官の成果は芳しいものではない。
最低最悪、成果が無いという事が続いてる。
これは現地で捜査にあたってる全ての警察官がそうなのだが。
さすがにこんな事が続くと嫌になる。
捜査が進まない事にではない。
無理なものは無理なのだから仕方ない。
警察官もそれくらいは分かってる。
嫌なのは、このどうにもならない事に大声で怒鳴る奴がいる事だ。
あるいは、陰険に貶してくる輩がだ。
「どうなってる?」
問いただすように聞こえる糾弾。
それが帰ってきた警察官を迎えた。
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【よぎそーとのネグラ 】
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