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12 無駄な抵抗、最後には自ら身を投げる事に

 霊気で覆われた地域の隣では、戦々恐々とした日々が続いている。

 目に見えない霊気の拡大による大量死。

 それを怖れる者達の悲鳴や苦悶。

 憂さ晴らしのために更に増加する暴力。

 こんな事が日常になっていた。



 相変わらず科学的な調査はまったく成果を出さず。

 日に日に死亡者の発生地域の拡大をゆるしている。

 個人で霊能者などに頼る者もいたが。

 それらも芳しい成果をあげてるわけではない。

 こういった場合、霊能者なども現地で死ぬ事がほとんどだからだ。

 そして、こういった情報が省みられる事はない。



 政府も何とかしようとしている。

 しかし成果が上がるわけもない。

 少なくとも科学的な手法は全く通用しない。

 効果の無い方法をいくら試しても無駄でしかない。



 しかし、さすがに一部の人間は察している。

 これが人知を超えたナニかによるものだと。

 確証はないが、そういう可能性を考えはした。

 だが、政府の活動としてこういった要素を持ち出す事は出来なかった。



 それでも更に一部は霊能者などをあたっていく。

 もしかしたら何かしらの手がかりを得られるのではないかと。

 その読みはあたり、彼等は貴重な情報を手に入れた。

 強力な心霊が事を起こしてると。

「あれはもう、ただの心霊ではない。

 神の霊というほどに強い」

 この言葉に情報を集めていた者達は戦慄をおぼえた。



 それでも希望はあった。

 かつては国家鎮護を担っていた寺社。

 古くからある巨大な寺院などでは、ひろがる霊気を抑えようと、連日の祈祷を行っていた。

 彼等は独自に活動を開始してた。

 こういった所を訪れた者達は、この事に安心した。

 なのだが。



「しかし、効果は期待できません」

 絶望的な顔の聖職者の表情に、期待は崩れていった。

「なにぶん、相手が巨大すぎる。

 人がどうにかできるようなものではない」

「…………」

「やれる事は最後までやるが、結果は保証できない」

 やむない事ではある。

 だが、望みは見事に消えていった。



 実際、各地の寺社による霊気の抑え込みは全く上手くいってなかった。

 大小様々な寺社が活動をしている。

 個人で活動している霊能者達もだ。

 だが、成果は全く上がってない。

 死亡者が発生する地域は少しずつだが拡大しているのだから。



 全くの無力というわけではない。

 霊能者や聖職者の念は霊気を阻んではいた。

 障害となって動きを遅らせていた。

 止めるには至らないだけだ。

 少しずつ確実に霊気は拡大している。



 しかも、そうして活動してる者達も次々に死んでいく。

 霊気を拡大するために活動してる者達によって処分されていっている。

 こういった者達を守る事が出来れば、事態も極端に悪くはならないのだろう。

 だが、警察などがこういった者達の警護に動くわけもない。

 お祈りをしてる者達の警備は、出動理由にはならなかった。



 おかげで警備はほぼ皆無。

 霊気の存在に気付いてる一部の人間が自発的に護衛をする事はあるだけだ。

 そんな護衛も、銃による射撃で簡単に仕留められていく。

 ろくな防具もつけられない一般人の護衛など、より強力な武器を持つ者達の敵ではない。



 個人で活動してたり、小規模な寺社はこうして処分されていく。

 さすがに有名で大きな寺社は攻撃される事はほとんどなかったが。

 それでも良い結果が得られるわけではない。

 周囲の零細や中小規模の寺社が消えていく事で、霊気が流れ込んでくるのだ。

 その霊気をどうにか退けるも、生き残った大手の寺社は孤立する事になる。

 生きてはいるが、逃げだす事は出来ない。

 外との接触を閉ざされ、陸の孤島となっていく。

 そんな寺社は、やがて食料が尽きて飢え死にしていく事になる。



 あるいは、飢えの苦しさからひと思いに楽になろうとする。

 自ら寺社を飛び出し、霊気の中に身を投げていく者が続出した。

 そんな者達は餓え死の果ての苦しみからから解放される。

 即死という救済を得る事で。



 そして、念じる者もなくなった聖域の中。

 寺社は霊気を遮る力も失っていく。

 霊能者も聖職者も、逃げ込んできた避難民も。

 その全てが等しく霊気に覆われていく。

 ほぼ全ての人間が、こうして死んでいった。

 例外を何人か残して。



 霊気に触れても生き残れる者達は、そのまま生き残り達と合流を果たしていく。

 いずれも似たような者達同士だ。

 すぐに打ち解け、新たな生活に馴染んでいった。

 こうなると、何のために逃げ隠れていたのか分からなくなる。

「さっさとこっちに来ればよかった」

 残念そうに愚痴をこぼす者もいる。



 積み重なる死亡者。

 非難した寺社。

 そこでの不安とひもじい生活。

 そして、苦しい環境なら必ず発生する事件。

 暴行に強奪などなど。

 憂さ晴らしのために他人を貶して痛め付ける者などいくらでもいる。

 そういった被害にあった者達からすれば、避難生活こそが地獄の日々であった。



 それから解放され、生き残った者達は気が楽になった。

 もう二度とあんな苦界に身を置かなくて良いと。

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