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10 互いに助け合い、でも鬱陶しいのはやめて欲しい

「まったく」

 ため息を吐いた少年は、肩をすくめて周りを見渡す。

 指示によれば、この近くに結界の土台になるものがある。

 それを取り除かねばならない。

 その為にやってきたのだ。

 霊気の邪魔をしてる者の処分も兼ねて。



 こういった事が最近はよく起こってる。

 どこからから霊能者がやってきて、霊気を押し戻そうとする。

 そんな事をされたら、平和な世界が遠ざかってしまう。

 なので、少年のように霊気を放つ存在の協力者は働く事になった。

 霊気を阻む結界除けに加えて。

 新たに結界を作り直そうとする、なんとか霊気に抵抗しようとする者達の処分も。



「ふざけるなよ」

 余計な仕事が増えて少年は腹を立てていた。

 このまま進めば、余計な人間いない平穏な世界が出来るというのに。

 それを邪魔する人間のおかげで仕事が増えてしまっている。

 ただでさえ、あちこちの封印を解除するのに忙しいというのに。



 様々な霊能者が邪魔をしてきた。

 それらを処分するために、霊気が示す敵の位置をもとに動き回り。

 警察から持ち出した拳銃で処分をしていっている。 退魔師のような霊能者がいなければ、やらずに済んだ事だ。

 死体の処分はしなくてもいい事だけが救いだろうか。

 どうせそこら中死体だらけだし。

 今更一つ二つ増えたところでどうという事はない。

 ただ、それと分かる外傷がある死体なので、見つかったら面倒な事になるかもしれないが。

 どうでも良い事だった。



 他と違う死体があったとしてもだ。

 それで何がどうなるわけでもない。

 処分しなければならない死体は数多く、一々気にしてられないだろう。

 こう考えるのは少年の一方的な思い込みではあるけども。

 実際、夥しい死体の処理に相手方も困ってるのは伝わってくる。

 他と違う死体が出てきても、何かが大きく変わる事もない。



 実際、今までにも処分した霊能者がいたのだが。

 他と違う、明らかに人の手による、銃器による死体があってもだ。

 それで警察などの動きが変わる事もなかった。

 内部にいる人間からの情報でも特に変化は無いという。

 目に見える部分だけいつもと同じようにふるまってるだけかもしれないが。

 おおっぴらに何かが変わったというわけではない。

 今はそれを良しとする事にする。



 仮に何かがわかったとしてもだ。

 それで全体の流れが変わるわけでもない。

 新たに何かしらの情報を得たとしても、対処方法があるわけでもないのだから。

 退魔師のような霊能者の死は、所詮この程度でしかなかった。

 全体の中の小さな出来事として全てが終わっていくのみ。



 ただ、やらねばならない事だというのも分かっている。

 今回に限った話ではないが、やってくる霊能者は危険だ。

 壊れた結界を作りなおす者もいる。

 最終的に霊気の強さに負けるにしてもだ。

 進行速度が大幅に落ちる事になる。

 そんな事をする連中を野放しには出来なかった。



 当然、必ず殺す。

 生かしておく事は出来ない。

 生きていれば必ず何かをする。

 行動不能にする程度では終わらせられない。

 確実に息の根を止めて、二度と活動が出来ないようにせねばならない。

 人道的なとか、道徳道義的な、とかいって敵を生かしておく程バカにはなれない。

 そんな事、敵への援助以外の何者でもない。

 いずれ仕返しをしてくる可能性があるのだから。



 特に今回やってきた退魔師は厄介だった。

 少年のように、霊気をまとっていた。

 より巨大で強力な存在の。

 神仏かそれに近いものだった。

 そんなものに守られてるので、力が強い。

 少年と共にいる存在ほどではないが、戦えば面倒な事になる。

 霊気同士の争いになれば、時間を無駄に使う事になる。

 だから、拳銃という物理的な手段を使った。

 一瞬にして全てが終わるからだ。



 どれほど神仏の加護が強くても。

 そういった存在による霊気が幾重にも守っていても。

 物理的な障害にはならない。

 だから拳銃による処分が効果的になる。



 逆に霊気による攻撃。

 呪いや祟りだったら、効果が出るまで時間がかかっただろう。

 普通の人間なら一瞬にして霊魂ごと消滅するけども。

 強力な存在に守られた者を殺すのには時間がかかる。

 だからこそ、少年に邪魔者の処分が求められた。



 もちつ、もたれつ。

 霊気によって少年は望む状態を手に入れる。

 その霊気を広げるために、生きてる人間の処分を求められる。

 お互いが得意な分野で活動する事で、もう一方の手助けをする。

 そんな関係が自然と出来上がっていた。



 だから面倒である。

 仕事が増えて喜ぶものはいない。

 それで利益をより多く手に入れるならともかく。

 邪魔を排除するだけなので、以前の状態の戻るだけなのだ。

 少年が得をするわけではない。



「鬱陶しい」

 素直な感想を吐き出す。

「あいつらと同じかよ」

 自分を虐げていた連中。

 それと同類に思えた。



 いればただただ日々が悲惨になる。

 取り除いても、苦痛が消えるだけ。

 良い事が起こるわけでもない。

 だけど、処分しなければ、延々と苦難が続く。

 ならば、殺して取り除くしかない。

 苦痛と苦難を止めるためにも。



 この苦痛と苦難が、今後の役に立つならば。

 今後の利益になるならば。

 あえて受けるのも選択の一つだろう。

 だが、そんな事が一切無いのだから、粛々と処分するしかない。

 それも出来るだけ早く。



 長く残しておけばそれだけ被害が大きくなる。

 ならば一秒でも早く始末するしかない。

 発生する被害を無くす事は出来ないが、低くおさえる事は出来る。

 これが唯一効果的な対策となる。

 鬱陶しいというのも当然だ。



 救いは、一人でも消せば、それからは邪魔にならない。

 少しずつでも処分すれば、それだけ邪魔になる者は減る。

 いずれはいなくなる。

 無限に霊能者がいるわけではない。

 地道に潰していけば、やがては絶滅する。

 面倒なのも今だけ。

 続けていれば、いずれ楽になる。



 そう信じて作業を進めていく。

 今、一人。

 近くに居た何人か。

 これらを片づけた。

 全部で数人だ。

 だが、数人分だけ敵の残弾が減った。

 このまま減らしていけば、いずれ弾切れになる。

 その時が少しでも早く来るのを願いながら、手近にあった結界を解除していく。



「あとは、と」

 後ろから迫ってくる霊気。

 それを感じながら結界を探っていく。

「少し遠いか」

 自転車をこぎだし、次へと向かっていく。



 この日も町が幾つか潰滅した。

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