➖第一話・奴隷騎士➖ ⑥
「エルザッ!右の狼が指示を出している!行けっ!」
大樹海に入りユウキとエルザは魔獣狩りを初めたがエルザは盾を得意とする戦い方と聞いていて守りが上手いのかと思っていたら実力は確かと言うだけあって相手の懐に入ってシールドバッシュを喰らわせ次々と魔獣を仕留め、本当に優秀な奴隷だと感心していた。
だがそんな時……
ガサッ!と茂みから飛び出して来たのは体長4メートルを超える巨大な熊だった!
巨大熊は咆哮を上げると、その巨体から想像も出来ないようなスピードでエルザに向かって突進してきたがエルザは冷静に盾を構えると突進して来た熊の攻撃を盾で受け流して体勢を崩した所に戦槌を横薙ぎに叩き込む。
ドゴォッ!! その重い一撃は熊を吹き飛ばすも、この巨大な敵を倒すには決め手に欠けた。
ユウキも魔法で援護するものの、すでに乱戦に突入していて大魔法を撃てばエルザにもダメージを与えてしまう為、少しづつダメージを与えている状況だ。
「ご主人様、少し時間を頂けませんか?この国に入って神の力を失っていましたが、この場はどの国の領土でも無い土地です、神聖魔法が使えるか試してみます」
「エルザは魔法も使えるのか!?判ったから試してください、その間はボクがこの熊を引き止めます」
ユウキが熊を引きつけエルザから離れるが、巨体にも関わらず熊のスピードは早く大口を開けて噛み付こうとしてきたのをギリギリで躱し、その隙に魔法を放つも致命傷を与えるには至らない。
「天に在す我等が父よ!天命に従い、その力を示し給え!《ホーリークロス!!》」
エルザが神聖魔法を唱えると同時に熊の頭上に光の柱が降り注いだ、その光は巨大な熊を強力な力で拘束して動けなくした。
その隙にユウキが大魔法を放ち、ようやく戦闘が終了し後には魔石だけが残されていた。
それを見届けた二人はその場にへたり込み大きく息を吐いた後、お互いの顔を見合って笑った。
「凄いなエルザは普通の戦士じゃなくって神聖騎士だったのか、軍でも高い地位にいたんじゃないのか!?」
「軍での事は…あまり…思い出したくないです……それでもいつか私が信じる神が救ってくださると信じて戦ってました」
それからもエルザの神聖魔法やお互いのフォーメーションを確かめ合いながら魔獣を狩り続け、素材を冒険者ギルドへ持ち込む頃には日も傾きかけていた。
「エルザって凄いな!あの魔獣を一撃で倒したんだから!」
「いえ、あれでも仕留め損ないました。あと二撃は入れないとダメだと思います……」
「それでも十分だよ……実力は把握出来たし、今日一日の成果としては充分過ぎるよ」
「そうですか?それなら良かったのです」