➖第一話・奴隷騎士➖ ①
➖第一話・奴隷騎士➖
「さて…これからどうしたものかな…」
空中に浮かび高度から360度見渡す少年の名前はユウキ。
彼は地球で死んだ後、異世界に10歳ほどの少年の肉体と有り余る魔力を持って転生したらしい。
さらに彼の死は神様のミスで死んだ為、そのお詫びとして、この世界存在しない魔法やスキルを使えるようにしてくれたそうだ。
他にも色々と説明されたが、彼の残念な頭では覚えきれなかった。
そんな訳で今しなくてはいけないことを上空2000メートルで第二の人生について考えていた。
「北は雪原広がる山岳地帯、東は見渡す限りの大樹海、南は雄大なる大海原、西は一面の荒野…何処に行こうか迷うね……」
ユウキは独り言を呟きながら、眼下に広がる広大な景色を見て悩んでいた。
この世界で好きに生きろと、いきなり言われても何をして良いのか何をすれば良いのか全く思いつかない。
それはそうだろう、人生はゲームや小説のように目的があって歩むものではないのだから。
「よし決めた!取り敢えず街を探して見よう!何をするかはそれから考えよう!」
ユウキは誰に聞かせる訳でも無く独り言を呟くと意識を集中して一番近い街を探った。
するとここから東に2kmほどの所に街が有る事が分かった。
その街はユウキの居る場所から見て、ちょうど北の山岳地帯と東の大樹海の中間に位置して、かなり規模は大きく、どうやら山岳地帯や大樹海から現れる魔物への防壁としての役割と南の海で取れた品物を西へと運ぶ交易ルートとして馬車が多く行き交っているのが見て取れた。
「う〜ん…あの街なら何処に向かうにしても中継地点になりそうだから取り敢えずあそこに行ってみよう!」
ユウキはそう言うと街を目指して飛行し、わずか四時間ほどで街へと到着したのだった。
そして馬車が数多く行き交う大きな街でだったので近くにいた商隊の馬車の列に紛れ込んでこの街の情報を探ってみた。
この国はユーラット国と言う場所で、その中のラシュムの街と呼ばれているそうだ。
そしてこの街は、この大陸で3番目の大きさを誇っていて巨大な城壁に囲まれ交易の要であるこの街には多くの商人や旅人、冒険者達が集まり賑わって居ていてユウキもその多くの人々に交り、街への門へと向かって歩いた。
暫く進むと街の入口には門番が立っており、その前で街に入る為の検査を受ける旅人や商人の列が出来ていて、やがて行列に並んだケイゴの順番が来ると余計な質問をされる前に門番に話しかけてみた。
「あ、あの…ボク…旅をしている途中で魔物に襲われて両親とはぐれてしまって…うっ…うっ…どうしたらいいのかわからなくて…ボクの両親がこの街に先に辿り着いてるかもしれないんですが知りませんか?」
ユウキは並んでいる間、身分証が無いと街に入れないと判っていたので、それらしい嘘をついて泣き落としで入る作戦を実行してみた。
するとユウキの話を聞き門番は少し驚き同情した後、直ぐに仕事モードになり対応してくれた。
「そうか〜大変だったなぁ。きっとボウズの両親も生きているさ!よし分かった!この札を持って憲兵所を訪ねてみると良いぞ?そうすればきっとお母さんやお父さんの情報も届いているはずだから!」
気の良い門番は涙ながらにユウキに通行証を渡すと街の中にある問題を解決する憲兵の詰所に行く事を薦めた。
「ありがとうございます!」
ユウキがそう言うと門番は笑顔で答え「おう!」と言うと、直ぐに仕事へと戻って行く門番に手を振りながら怪しまれないように人混みの中に紛れ込み街へ入る事に成功し、労せず通行証と言う身分証も手に入れる事に成功した。