難所のシャムショ
言葉を投げられた当時、『チゴ』の意味もわからなかった子が、どうしました、と首をかしげる。
「 ―― いや、次はシャムショだなあ、と気が重くてな・・・」
まとわりついていた阿吽はシュンカがなだめ、どうにか型をもどして門へとかえった。
だが、問題は次の難所だ・・・。
セイテツが気持ちを整えるまえに、シュンカがするりとそこへ入った。
待て、と止める間もなく、伍の宮セイテツさまとシュンカただいまもどりました、と声をはりあげる。
「おう、おかえり・・・・シュンカ?」
すぐそこに、たまたまいたアキラがその顔をみとめ、すぐにかけよる。
「どうした?この頬は?」
ひどく色の白いシュンカのそれはやはり目立つ。
まさかそんなに目立つとも思っていなかったのか、シュンカは申し訳なさそうにセイテツをみやり、転んで打ちました、と顔をかくすよううつむく。
「まあ、とにかくこのことはコウセンには言わんでくれ」
おがむ真似をしてセイテツはシュンカの頭を抱え込むようにそこを後にした。
―― はずが、後ろ首をひきもどされる。
「待ちやがれ。この色ぼけ絵師」
「・・・・・・・・」
振り向かずとも、低いその声がこのシャムショの責任者である男だとわかる。
こちらが振り向く前に抱え込んでいたシュンカを取り上げられた。
「んっが!?しゅ、シュンカ?どうした? ―― だれかに、叩かれたな?」
コウセンがのぞきこむ白い顔が、見る間に赤くなる。
「その、・・・恥ずかしながら、・・・女の方に無作法な声をかけてしまいまして、こうして、叩かれました・・・。すみません、恥ずかしくて先ほどアキラさまには、嘘を言いました」
コウセンの後ろでアキラが驚き笑う。
シュンカもそんな歳なのだなあ、とシャムショの他の男たちも微笑む。