あうん に睨まれる
―― 2 ――
そんなわけで、シュンカの頬に赤いあとが残ったまま、青い顔のセイテツは天宮にかえることとなった。
まずは門からだ。
「どうした?」
「なにした?」
門番をする阿吽が台からとびおりイヌから人の型になる。
セイテツよりもさらに上背のある浅黒い肌の男と女は、身にまとう布の面積はせまく、たくましくめりはりのある体でシュンカにせまる。
「たたかれたのか?」
「どこのどいつだ?」
赤くなったシュンカの頬を女の型をした方がなめ、反対の頬に鼻先をつけた男が、そいつの名を言えとせまる。
「これは、おれがわるかったんだよ」
「シュンカが『わるい』?」
「あるわけなかろう」
二匹は後ろで黙っているセイテツをにらんだ。
「このにおいは『茶屋』だろう?」
「セイテツ、シュンカをつれこんだか?」
「っはああ!?ちょ、ちょっとまてよ!」
そんなことするわけないだろう、と絵師はあわてた。
なにしろ、ツバキに蹴りをくらったのも、そういう勘違いだったからだ。
「その、・・・おれのなじみの女が、シュンカをちょっと勘違いしてな」
「チゴかと思われたようです」
「!?シュンカ?」
驚いたら、おれだってもうそれぐらいは知っています、と微笑まれる。
それは、シュンカの嫌な思い出にもつながることだったので、絵師はいつものような軽口がたたけない。