正直に
―― 10 ――
すっかり陽もくれてから戻れば、セイテツが目をこすり迎えた。
「すまない。すっかり時間の感覚がなくなってた・・・で? なんでてめえが一緒なんだよ?」
スザクをにらむが、買い物の品をシュンカに渡されると、礼を言い、まだ今日はこのまま描き続けられそうだと、機嫌よく部屋へとひきあげた。
先に通ってきたシャムショには、二人が下で妖物退治をした話はすでに伝わっており、シュンカの腕を心配したコウセンがでむかえると二人の様子を見て、そろって茶屋に世話になったのか、と髭をかいた。
「しかたねえだろ。堀の水も魚もくせえ」
スザクの知り合いの男から新しい着物を借りて帰ってきたのだが、先ほどの寝ぼけたセイテツは気づかなかったようだ。
そのままいつものようにシュンカは夕飯をつくり、スザクは夜のつとめをはじめる。
シュンカの傷は思ったよりも浅く、すぐになおるだろうと下界の医者にいわれた。
スザクには顔をしかめられたが、こんな傷なんともないとわらった。
セイテツに食事を運ぶと、そこに置いておいてくれと言われ、顔もみずに扉の外に置く。
台所にもどれば坊主が待っていた。
「テツがいねえなら、いっしょに食うか」
「ほんとですか?」
スザクがここで食事するなど珍しい。
嬉しい気持ちのまま向かい合い、食事をはじめる。
坊主は食事の間、決して口は開かない。そして、きれいに素早く食べ終える。
「なんだ?」
「いえ、ついみとれて」
「あ?」
「いえ、その・・・・スザクさまの所作はいつもきれいで、つい、みとれてしまいます」
もう、坊主に『うそ』をつかなくともよいのかとおもい、正直に話した。
「・・・・あのな」
珍しく坊主が口ごもる。




