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堀に落ちる
振り上がった女の手に、ぎらりとひかるものを認め、シュンカの体が勝手に動いた。
自分が前に、スザクを刃物で傷つけた記憶だけが頭をしめる。
女の前にとびだし、どうにか間に合ったと無事だった大きな背を見る。
刃物がささった腕を動かすのはつらかったが、女を抱え込まないと、まだスザクにとびかかりそうな勢いだった。
「どけえ!!主様は、あたしたちの願いをかなえてくれんだよ!」
「あれは今、ふつうのものではないのです!あなたたちの願いをおかしな『力』に変えてしまった妖物です!」
「だからなんだっていうのさ! あたしの願い、かなわなかったらどうしてくれんだい!」
どんっ
女の細い腕にしては強い力だな、なんてのんきなことを思いながら、堀へと落ちた。
もがいて顔をあげたのに、次々に女の顔をした波に襲われる。
わらってる。
あんたも、願いがあるんだろうと。
かなえたい願いがあるのだろう。




