想いつたえる
まだ甘い場面つづきです。ご注意を
坊主の大きな手が顎にそえられ、伸ばされた親指で下の唇をなぞられる。
「―― この先困るのは、どっちかっつうと、おめえだと思うぜ」
きいたことのないスザクの小さな声に驚いて眼をあけようとすれば、力強く抱え込まれる。
あけた視界は真っ暗で、自分が坊主の胸に顔をうずめているのを理解する。
ほんのりと、女のおしろいの香りがたちのぼり、思わずのばした手で坊主の着物の背をつかむ。
「―― 困りません。・・・スザクさまが許してくださるかぎり、・・そばにいたいです」
正直な言葉に、許すも何もおめえはおれの従者だろう、といつものように頭をたたかれる。
ほんとうは、確認するのがこわかったが、聞かずにおれない。
「・・・おれのおもいは・・・従者としてのものじゃありません・・・それでも、おそばにいて、・・・いいですか・・?」
自分のおもいは伝えてしまった。
もう、取り返すことはできないのだ。
スザクのため息のようなものが頭の上にこぼれた。
我に返ったシュンカはいそいで身を離す。
ところがまた、頭をつかまれ、もどされる。
「 おれは、この先も、おめえを離す気はねえぞ」
「・・・・・・・・」
抱えこまれ、頭に直に伝えられた。
どうしたわかったか、と笑っているような声音できかれ、ただただ、うなずくしかなった。
涙がとまらず、もれそうな声をどうにかおさえる。
坊主に抱え込まれ、背中を撫でられている。
いくらこの状態で、自分の激しい心音を感じていても、ここまでの出来事が、夢の中にいるようで、いまいち信じられない。




