来た理由
あまりよろしくない表現あり
「あのな、先におれのはなしをきけ」
そのままベッドに腰をおろした坊主は、手の届く近さで自分にむけられたいつもの素直できれいな眼に、満足する。
「 シュンカ、おれは、テツとは違うけどよ、これでも男だからな。女がほしいときもある」
はい、と小さな声が、小さな口からこぼれた。
「それとは別に、セリに頼まれたもんを届けに、あのババアのところによく行く」
ババア?おランさまはまだそれほど、といいかかける相手に手をあげて続ける。
「おれのはじめての女があれだ。 あっちはおれのことを男にしてやったなんて言うがな、こっちにすりゃ、あの女に喰われたようなもんよ」
シュンカが赤い顔で、くわれる?と聞く。
「あの店の女どもはみんな、おめえみたいな何もしらねえウブな男を、舌なめずりしてまってやがんだ。うかつに寄れば、喰われんぞ」
そんなわけ、といいかけるシュンカの口の前に坊主の大きな手が立てられる。
「テツのあの女だって、おめえにいやにすり寄ってたじゃねえか。 セリとは違う女どもだから、油断するんじゃねえ。 ―― だいいち、おれの居場所を教えたやつってのはどこのどいつだ?」
思わずつめよると、身を引いたシュンカが、わかりません、と目をふせた。
「ちゃんとおれをみろ。―― なんで、そんなやつの言葉をきいた?」
「・・・す、・・ざくさまに、・・・会いたかったからです・・・」
「 ――――― 」
予想していなかった返事に、坊主の思考が中断した。
「・・・おめえ、色街に興味があったから、来たんじゃねえのか?」
それで、あの店に来たのでは?
困ったように見合わせた顔が、横に振られる。
「じゃあ、・・・やっぱ、おれを、迎えに来たってことか?」
ちがいます、とはっきりと否定される。
あの、と何かを決意したような眼をむけられる。
「スザクさまは、・・・おランさまのことを・・・愛してらっしゃるのですか?」
「 ――――――――――― あ?」




