おれのだ
―― 8 ――
くるくるまわる風車。
ほら、まわって まわって
視界はにじみ、人をかきわけ、どこを走っているのかよくわからなかった。
何度か曲がったその先に、見覚えのある紅。
風車の出店がある通り、角を曲がろうとしたとき、あの黒い髪の女が笑って立つのが目にはいる。
と、いきなり足をひかれたように転んだ。
転がって誰かの足にぶつかる。
謝って見上げれば、追いついた坊主だ。
「―― 立てるか」
「・・は・・・い・・・」
転んだ拍子にとれかかった笠をはずされ、頭を軽くたたかれてからもどされた。
いきなり坊主に片手で抱えあげられる。するとそのまま、道を色街のほうへと戻り始めた。
おランの店とは違う方向だ。
客引きをよけるように細い道へとはいりしばらく川沿いの裏から進むと、一軒の大きな店の裏木戸をくぐる。
「お、スザクじゃねえか」
縁側に寝転んでいた男が身を起こす。
「空いてる部屋借りるぜ」
「好きにしろ、・・・と言いてえとこだが、それ、さらってきたんじゃねえだろうな」
左の頬にえぐれたような傷を持つ男は、遠慮もなく縁側からあがりこんだ坊主が抱えた『それ』を眼でさした。
ぼうっとしていたシュンカがこたえるよりはやく、スザクがこたえる。
「あほ。こりゃあ、おれのだ」
ああそうかよ、と男は笑い手をふる。




