おまえに むかねえ
視界が、いっきにゆがんだ。
「・・・ある方に・・・・あの場所に・・・いるかもしれないと、・・・それを聞いて、・・・足をむけました・・・」
ぽたりと、たれた水をごまかすように顔をさらにうつむけ、謝る。
「お邪魔するつもりは、・・・なかったんです・・・」
「あ?」
「すみま・・せん。もっと、・・・気がきけばよかったのですが・・・そっ」
「―― なんで、泣いてる?」
肩をつかまれ、笠をあげられた。
「いえ、あ・・・じゅ、・・・従者として、失格だな、と。・・・今度から・・・気を、つけます・・・」
「シュンカ」
「・・・はい」
顔も見られないままの返事に、坊主はいつものようにちゃんと顔をあげろ、とは言わなかった。
「あまり、・・・ここには来るな」
「っ、・・・・・・」
やはり、本人の口から告げられると、痛みが違う。
坊主のさとすような声が続く。
「おまえは目立つし、ここは『よどみ』だ。―― おまえには、むかねえ。 だいたいおランのとこにいる女たちは、―― おい、シュンカ!おい!」
我慢できず、走りだした。




