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おとぎばなし ― みつるとき ―  作者: ぽすしち


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22/48

誰をまつ




 ―― 7 ――






 からからと一斉にまわりだす赤い風車は、まだあの場所で売っていた。




 買い終えたものを大事に懐に抱えたシュンカは、その音と様子にみとれていた。

 



          「ねえ」

 

 いきなり背中から声。


 ぼうっとしていたせいか、気配もかんじとれなかったが、ふりかえればツバキとおなじ歳ほどの若い女が立っていた。


 たちのぼるおしろいの匂い。ゆるく結った黒い髪。きっとむこうの色街の女だろう。


 着物はツバキとは違い、ずいぶんと地味で古いかたちの着こなしだった。



 ねえ、と女が横にくる。

「 あんたさ、このまえ、あの風車買ってもらってたろ?」


「え?あ、まあ」


 ツバキの他にも若い女に見られていたのを知り、顔が熱くなる。



「おれが、ものほしそうな顔したから、買ってくれたんです」

「へえ。ねだるの上手そうだねえ」


「ねだる・・・まあ、そうなっちゃうのかなあ・・・。あの人すごく優しいから、そういうのにすぐ気が付くんですよ」

「へえ。ずいぶんといいイロつかんでるね」


「い!?っち、ちがいます!あの人は、おれの、つかえてる人の一人です」



 隣の女はじろじろとシュンカをながめ、いきなり笠をもちあげた。

「 ―― なんだい。色街のチゴじゃないのかい?どっかのお抱えかい?」



 あわてて笠をひきもどし、そんなんじゃありません、と言い置いて足をすすめた。





「 《あの人》が違うっていうと、 ――― ほかに、だれのこと待ってるんだい?」

 

 女の声に思わず足をとめた。



 

 ――― 待ってる?



 いつのまにかまた、女が横にいる。


「だって、あんた、『だれか』のこと待ってるじゃないか」


「・・・いえ、べつに、」





「ああ、そうか。待ってるんじゃなくて、伝えたいとおもってるんだね?」


「伝えたい?」


「手伝って、やるよ。あんたの想い。 ―― しっかり相手に伝わるように」


「・・・・何を言ってるんですか?」


「その相手、いま、この先の色街にいるんだろ?あんたの知ってる店にさ」


「え?ちがう。 あの方は、 」


「行ってみてごらんよ。―― おもいが伝わっていないんじゃア、ほかの奴にとられちまうよ」



          

        ざああああああああああ

 

         突然のつむじ風。






 ―――― 目をあければ、女はもういなかった。


 


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