ひどい!
めったに降りることもない下界で《買い物に付き合う》というかたちで、絵師が自分を喜ばそうとしてくれているのを、シュンカはとてもうれしく思う。
セイテツが選んだ風車を、にこりと渡される。
シュンカはその顔をしっかりと見つめ、感謝を伝える。
なんだか言いたそうな絵師は、口をおかしな具合にまげ、「ああ」と笑うように息をついた。
「―― おまえはほんっと、なんて言ったらいいか・・・まあ、とにかく、大きくはなったな」
頭をなでられ、そのまま肩を掴まれて横に並ぶ。
「はい。まだまだセイテツさまとスザクさまには及びませんが、このまえ、セリさまをちょっと追い抜きました」
そうなのだ。
ついこのあいだまで、自分の胸ほどあるかどうかだった背丈の子供が、いつの間にやらこちらの肩まで、その丈をのばしている。
ただし、まだ背負えるな、と、口にはせずに、絵師は抱えた肩の薄さを確認する。
「セイテツさま?なに笑ってるんですか?おれがセリさまを抜いたっていうのが、おかしかったですか?」
「いやいや。おかしいんじゃなくて、なんだか、嬉しくてな」
「え?」
「こんなおれや、あんな坊主や、そのほかのクセ者ぞろいの場所で、よくもまあ、こんなにまっすぐいい子に育ったものだと。――― おまえの親御殿にも、胸をはって言えるほどの、いい男に育った」
「っつ、っそ、っそんな、『いい男』というのは、サモンさまのような方につかうものだと、セリさまが、」
「シュンカだって負けていないさ。だけど、―― そうだな、いい男ではあるが、きっと、お袋殿に似ているんだな。たいそう、美人でもある」
「な、セイテツさま、それは、女のかたに対するほめ言葉で、」
いや本当のことだから、うんぬんとさらにわざとからかい、きゃあきゃあと、かんぜんにじゃれあう雰囲気の二人連れめがけ、いきなり、女がとんだ。
「 っこんのおおおおおお!色ぼけがああああああ!!! 」
どすっ、と、いきなり背後からとび蹴りをくらったセイテツは、思わず反射的にそれをよけそうになるのをおさえ、わざと受けて転がった。
蹴った女はそのままセイテツの背にのりあげ、この嘘つき男!とこぶしをあげる。
「ちょ、ちょっとお待ちください!」
あわててその手をつかんだシュンカを見上げた女は、怒りでひきつった顔を急にゆがめて泣きはじめた。
「・・・・ず、ず~る~い~ あ、あんた、なんでそんなきれいな顔してんのよお?もお!ひどい!ひどすぎるっ!」
ぱんっ
あいていたほうの女の手が、シュンカの頬を打った。