《嘘》の種類
どうにもいつもと様子が違う男をみようと足をすすめると、いきなり坊主が、くっと笑って口にした。
「わかたけ、みてえだな」
「 ―― は?」
「若い、竹みてえだ。まっすぐで、しなやかで、眼にまぶしい」
「――――― っそ、っそ、」
口ごもるシュンカの顔が見る間に染まり、腕を組んだ坊主が数歩より、いつものようにぽん、と頭を軽くたたく。
「『気』が乱れすぎてんぞ。どうしたよ?」
「・・・・なんでもありません・・・」
頭を叩かれてそれを調整されるのが、このごろはよくわかる。
その手が心地よいのは前から変わらぬが、心地よさの種類が、前とは違う。
そっと、頭にのった大きな手の上に自分の手をのせてみる。
「 ―― スザクさま、おれはそんなふうにほめていただけるような・・従者じゃありません」
見合った目が、けげんに見開く。
「べつにほめてねえが。 ―― ほんとのこと言ってるだけだぜ」
それは、その眼をみればわかることだが・・・・
「――― えっと、・・・とにかく、お、おれ、台所に行くんで」
逃げようとしたのを重なっていた手にとめられる。
ふりむけば、どこかおこったような顔があった。
「 ―― シュンカ、おれは口は悪いが、『うそ』はいわねえ」
「っ、・・すみません・・・」
うなだれるのに舌を打った坊主が頭をかきながら、うなる。
「あ~だからよ、・・・おめえが『うそ』をいう理由が、わかんねえんだ」
「申し訳ありません。・・・その場を、どうにかごまかそうと」
いやそうじゃなくて、と坊主がぐいと腕をひく。
すぐそこからのぞきこむきれいな茶の眼にひきこまれそうだと思いながら、坊主の低い問いを声いた。
「シュンカ、おめえ、 ―― 何か自分に『うそ』をついてやがるだろ?」




