きいてください
―― 3 ――
思ったとおり、シュンカの顔をみた坊主はほんのすこし目を動かしただけで、お茶を飲み干した。
向かいに座った絵師は、いちおう、念のため口にする。
「おれのせいだ」
「だろうな」
「・・・あのな、理由とか、聞く気はないのかよ?」
「ねえ」
「頼む。聞いてください」
「テツの女が、何か考え違いしやがったんだろ?」
「・・・なんだ。だれかに聞いたな?」
気分が楽になった絵師もお茶に手をのばす。
きいてねえよ、と坊主はシュンカに空の湯飲みをだし、お茶をさいそくした。
「二人そろって茶屋くせえ。そのうえシュンカがだれかに叩かれたとなりゃ、テツの女がシュンカをテツのイロと思ったか、だろ」
「・・・その通りだけど・・。おまえさ、―― たとえばおれが、シュンカをむりやり茶屋につれこんだとか、考えないわけ?」
坊主は、はあ?と口をまげ、二人をみくらべる。
「たしかにテツは色ぼけだがよ、こどもに手ぇだすほど、困ってねえだろ?」
――― ・・・・・こども?
思わず絵師はシュンカと目をあわす。
見る間に顔を赤くした『こども』よばわりされたシュンカが、怒った声をだす。
「す、スザクさま、おれ、これでももうすぐ、十七です」
「ほら、こどもじゃねえか」
「スザク、・・・おまえ、おれと会ったとき、いくつだったよ?あんときのおまえは、『こども』だったか?」
「ああ?会ったとき?・・・・・・」




