風車(かざぐるま)
内容がおもいきりBLでのはなしとなっておりますので、ご注意を。
―― 1 ――
「 わあ・・・ 」
思わず声にしてしまったのは、目にも鮮やかな紅いそれが、いっせいにまわりだしたからだ。
「ん?ああ、風車だ。なんだ、シュンカ、ほしいのか?」
風をうけ軽い音をたて動くそれらを、木枠にたくさん並べた出店に認め、足をむけようとする男を、セイテツさま!とあわてて止める。
ちがいます、とあせった言葉がこぼれる。
「―― むかし、よく父がつくってくれたものですから・・・」
口にしてから、しまった、と思ってもおそい。
「 いえ、このようにきれいなかたちではなくて、拾った枯葉をただつなぎ合わせたような不格好なもので・・・」
もごもごと続けた言い訳のようなそれに、絵師をなりわいともする男が、手をさしのべてきた。
「・・・それなら、買おう。おれには枯葉をあつめても、そんな器用なものはつくれないしさ。―― ひさしぶりに、親父殿の話をきかせてくれよ」
空にかえってしまった父親の話を、この男は無理なく、ゆっくりと聞いてくれる。
伸べられた手を見つめ、恥ずかしくもそれをにぎり、「はい」とうなずくしかなかった。
こんなシュンカはもうじき、十七になろうとしている。
今日、珍しく下界の街に出てきたのは、『絵師』でもあり、『元神官』というこの男に、買い物につきあってくれと言われたからだ。
普段、坊主の『従者』というかたちで下界には来ても、にぎやかな店が立ち並ぶこの『街』には、めったに来ない。坊主である男が、その場所が、好きではない、と言うからだ。
それでもたまに、街中の商店での『弔い』を引き受ければ、来ることもある。
だがその時は、前を歩く男を追うのに精いっぱいで、街の様子をこんなにゆっくりとながめることはない。




