ハイスペックな燿くん
拝読頂きありがとうございます。
ちょっと、間が空いてしまいましたが、俗編UPします。
暖かくなってきて、桜の蕾も膨らんできた。
東京では、昨日開花宣言があり、来週末には、満開だと思う。
大学の図書館で民俗学の資料を漁りながら 燿に声をかけた。
私は、無事に大学4年を務めあげて、今年から院生となる。一学年下の燿は、今年4年生で卒論やら、就活やらで忙しいみたいだけど。忙しいという割には、いつも私にくっついてくる、引っ付き虫だ。今日も卒論のついでだからと私の資料整理を 手伝ってくれている。
(ついでかよ・・)
ま、燿なら就活しなくても大丈夫だろうけどね。
「燿く~ん!お花見にいこうよ~」
「いいですよ~、どこに行きます?それと何時にします?」
「んとね~二本松の霞ケ城に行きたいな~ってさ、城址公園に2500本の桜が、植わってるらしいよ。」
「二本松って、今じゃないですよね、新学期始まるんですけど・・先輩と違って僕は、まだ学生なんですから勘弁してください。」
(あ、やばい・・このままだと断られそうだぞ)
「私だって、院生だから、学生だよ~。時期は、三月末から四月の頭かな~、燿のゼミが、始まる前には戻れるよ。だから、一緒に行こう」
目の前にあるタブレットで霞ケ城のサイトを開いて燿に見せる。
『霞ヶ城の別名を持つ二本松城跡を公園とした花の名所。公園内には、ソメイヨシノをはじめとした大小約2500本の桜が咲き誇り、その名のとおり霞がかったような美しさを堪能できる。』
「これこれ、凄くない?写真も見たけどいい感じだし、近くに温泉もあるんだよ。岳温泉ていうんだけどね、温泉から見る夜桜・・お勧めだと思うんだよね~」
「温泉に桜ですか・・先輩の好物ばっかりですね。これでお酒があれば完璧ですね」
「温泉に泊まって、桜並木散歩したり兎に角、そこもかしこも桜だらけ??」
「二本松だと日帰りも出来ますよね?」
「温泉がそこにあるのに何故に日帰り?それは、温泉に対しての冒涜です。解せぬ!!」
「それにせっかく行くのに日帰りなんて勿体ないよ~、燿坊ちゃん、確か良い車をお持ちでしたよね?」
胸の前で手を組んで少し上目使いのキラキラした目で 燿を見る。
燿は、この角度のお願いに弱いんだよね~。
「ね、燿君お願い!!」
「うわっ、あざと!!なになに?僕は、運転手ですか?荷物持ちですか?」
「まぁ、そう言わずにお願いしますよ~二本松は歴史と文学の宝庫なんだよ~」
「はいはい、解りました。運転手させて頂きますよ、雫お嬢さま。車も出します。スポーツタイプとセダンとどちらにします?」
尋ねられて考えた。基本、山道を走るのだから、クロカンがいいと思うんだけど。
それにお天気は、雨かもしれないし・・。燿がいるから晴れるか?
「なんか、前にフォルクスワーゲンの四駆もってなかった?スポーティなエクステリアで都会にも映えますとか、言ってなかった?あれは、売り出しの文句だったかw」
「あ~、あの車は、都内じゃ猫に小判だ!って、兄貴が持って行って返してくれないんですよ。気に入ってたんだけどね。」
「山道も走るから、四駆がいいかな~、それに雨が降ると山道は危険だから。雨降ると思うよ~」
我ながらスゴイお強請りの仕方である。
「ああ、確かに雨になると山道は危険ですよね。僕が運転してる間は、降らなくても休憩中に降るか。」
「うっ、酷い・・絶対降ると思ってるでしょ?」
「はい、まさか先輩・・降らないとでも思ってるんですか?」
「そこまで言い切られると返答に困るんですけど・・。」
非常に悔しいが、今までがそうだったので違うと言い切れない。
「いっそ、キャンピングカーででも行きますか?」
笑いながら燿が云う。どこまでもハイスペックな奴だ。
「母が、オートキャンプに嵌まってて、父がキャンピングカーをプレゼントしたんですよ。偶に二人で出掛けてるみたいですけどね。」
「燿のご両親て本当に仲がいいよね~、お母さんも奇麗だし羨ましいぞ」
燿のご両親は、ともに有名人だけど、とても気さくでフレンドリーな方々だ。
母親の茉莉花さんは、人気料理家で、本も出されている。遊びに行くといつも手作りのお菓子を食べさせてもらった。父親の太陽さんは、朝比奈不動産グループのCEO偉い人なのに偉ぶらないそんな人。
お兄さんの昴さんは、専務取締役になったって聞いたけど、元気かな?
というわけで、燿は、超ハイスぺなのです。
輝の家と我が家が、隣あっていたので幼馴染である。
我が家は、家だけはでかいってだけの普通の家だけどね、私にとってはお化け屋敷だったよ。
住んでいた家は、旧華族の別邸だったらしい、今では、燿の父の力添えでマンションやらを建てて家賃収入で暮らしているって訳なので、我が家はハイスぺではない。分類するとお得意様だな。
自分で言ってて少し悲しくなる。ま、お蔭で自由にさせてもらってるんだけどね。
おっと、話がそれてしまった。軌道修正!!
「キャンピングカーはいらないかな?そこまで大きいと逆に動きづらいから、脇道にそれたところのお社とか見たいから・。やっぱり四駆がいい!」
「わかった。兄貴から返してもらう、今週末にでも赤坂に持ってきてもらうわ、ずっと運転してないから調子もみたいし・・ついでにどっか行く?」
「じゃ、ドライブしちゃおうか~、桜のトンネル走りたくない?」
「桜のトンネルねぇ~、どうせ近くに温泉でもあるんでしょ?」
「凄い!燿って、サイコパス?」
「じゃ、週末に迎えにいくよ。待ち合わせは、ラインでも入れてくれる?」
「OK,おねぇさんが、美味しいお弁当準備しちゃうね~」
そう言いながらそっと、携帯で天気予報を確認する。
『雨の確立50%』やっぱり、と複雑な感じ。
「よし、じゃ、さっさと片づけて準備しないと、楽しみ~」
思わず、顔が、緩む。気を抜くとにまにましてしまいそうなのを気合でごまかす。
「じゃ、一旦家に戻るんで、今日は遅れないけど気を付けて帰ってね」
「うん、いつもありがと、またね~」
輝の後姿を見ながら手を振る。周りの女の子がちらちら見てる。
うん、そりゃ、見るよね~、と呟いて今ある資料に目を通すことにした。
面白い、先が気になる方は★頂けるととっても嬉しいです。