表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/10

燿の中のxx(2)

 次に 目覚めると・・それは、良く知ったところだった。

 ただ、違うのは・・俺の視界の位置。高みから物を見る感覚だった。

 俺は、すぐに雫を探した、俺の魂が雫を求める。


 見つけた!

 俺は、急いで雫の傍に・・・

 雫・・触れたいのに・・触れてもそれは、風に流されたようにすり抜けてしまう。

 雫の頬に 頭に触れても雫が気づくことはない。

 傍にいるのに・・・。

 悲しくて寂しくて胸が張り裂けそうだ・・。



 雫は、学校帰り、一人で歩いている。

 以前、キラキラした目で俺に 自慢した赤いランドセル・・・。

 嬉しそうに毎日、磨いていた真っ赤なランドセル。

 なのに 傷だらけのランドセル、どうして?何があったんだ?

 

 それにどうして?一人なんだろう?

 集団下校だから、同じ方向の生徒と帰るはずなんだけど・・。


 暫くすると 後ろから同級生がかけてきた。

「おい、何一人でかえってんだよ」

「そうだよ~、みんなで帰らないと私たちが叱られるんだからね」

「少しくらい成績良いからっていい気になってんじゃねぇぞ!」

「おい、返事しろよ」

「・・・・」

 同級生のヒロシが、雫の肩を掴もうとした。


 雫は、走って逃げた。

 脇道にそれて逃げた。でも、それが間違いだった。

 そこは、道路の舗装工事の途中で、砂利道だ。

 足元は、掘削した岩が敷き詰められていた、つまり、とがった石ばかり・。


 足の遅い雫は、すぐに捕まって転がされた。

 転んだ時に 手のひらと膝を 石で切った。血が出てるけど誰も心配しない。

「おまえ、生意気なんだよ、幼稚園もいってないくせに」

「xxが死んだのもお前のせいなんだってな」

「・・ちがう・・・」

「あの日、最後まで一緒にいたのはおまえだって聞いたぞ」

「お前が殺したんだよ・・お前と仲良くしなきゃ死ななかったんだからな」

「そうだよ、隣の恵美ちゃんと仲良しだったのに・・あんたが、盗ったんでしょ?」

「恵美ちゃん、ずっと泣いてたよ」

「・・・知らない・・」


 正人が、足元の石を 雫のランドセルに投げた。

 すると他の同級生も同じように投げた。

 雫は、立ち上がって逃げようとした、すると正人が、ランドセルを引っ張った。

 ’ぶちっ・・’

 と音を経てて留め金の部分が壊れた。

「いやー、やめて・・」

「煩いんだよ」

 正人が、足元の石を雫めがけて投げた。

 

 普段ならよけることも出来たかもしれない、でも、ランドセルを気にしていた雫は、うまく避けられなかった。

’ガツン’

「っ・・」

 

 石がぶつかった所を 手で押さえる。

 暫くすると、指の間から血が流れてきた。

 大量の血に驚いたのか、怪我をさせたことで怯えたのか。

「お前が、逃げるから悪いんだ、誰かに言ったら容赦しないからな」

「ほら、こんな奴ほっておいて帰るぞ」

「お前らもバラしたら同じ目にあわせてやるからな」

「・・・」

 ちらちらと振り返っても誰も声をかけずに離れていった。


 血を 流しても気丈に同級生をにらみつける、そんな雫を俺は、抱きしめた。

 だけど思いも声も届かない。


 それからも ことあるごとに 雫は、同級生に虐められた。

 傘で突きまわされたり 悪口なんて日常茶飯事。

 伸ばしていたきれいな髪もガムを張り付けられて 短く切られた。


 教室の真ん中に一脚だけ椅子をおいて雫が座らされる。暴れないように両手を縛られて。

 クラスの皆で 断髪式のように順番に切られた。

「裏切者は、許さない。みんなでやればいい・・」

「辞めてください・・」

 泣き叫ぶ雫に 誰も救いの手を 延べない。


 雫は、孤独だった。

「xx君、なんで死んじゃったの?なんで雫は、みんなに嫌われてるの?」

 今はいない、俺の名前を 呼びながら声を立てずにひっそりと涙を流した。

 虐めにあってるとは、誰にも言えずに。

 

 そんな雫を見るたび、俺は、女神に祈った。

「頼む・・俺は、雫を守りたい。傍にいるだけじゃ何もできない。だから俺に雫を守らせてくれよ」

 何度祈っても俺の願いは、天に届くことは、無いと絶望した。

 そして 雫は、笑わなくなった。


 掘削石で怪我した部分は、毛根が、傷ついたためか?その後、白髪となり黒髪が生えることはなくなった。

 傘で 突かれそうになり避けた時に 眼鏡が当たって怪我をした。

 それで眉間に近いところに傷跡が残った。

 ずれていれば、失明しかねない状態だった。

 でも その怪我も雫が、つまずいて転んだのが原因とされてしまった。

 先生だって、気が付かないはずはなかったけど、何も相談しない雫を放置した、俺にしたら同罪なんだよ。雫には、誰もみ方がいなかった。


 俺は、もう我慢の限界だった。そして、叫んだ。

「頼む、このままじゃ、雫が殺されてしまう、助けたいんだ頼む。」

「女神、願いを・・でなければ俺は、お前を許さない!呪ってやるからな」

 あまりの怒りに 目の前が真っ赤になった。

 そして、現世に来てはじめて気を失った。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ