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そうだドライブに行こう(1)

ちょっと、お気楽ドライブに

 雫と約束していた週末がやってきた。

 折角のお花見が、花曇りの天気で正直うきうきする気分じゃない。ま、雫が一緒の時点で雨なんだけどね。兄に貸し手ていた車の調子も良い感じでエンジン音が腹に響いてくる。やっぱり4駆は安定してていいわ。


 雫のうちの駐車場に停める場所は無いというので、予め迎えに行く時間を伝えておいた。

 週末なのでいつもよりは、車の量も少な目なので路上駐車で待つ。


 グレーのハイネックのニットに黒のロングコートをひっかけて雫がやってきた。

 手には、大きな荷物・・

(まさか、あれ全部食い物じゃないだろうな。。でも、雫ならあり得る)


「雫先輩おはようございます。ところで凄い荷物ですね・・」

「これは、お昼だよ~」

「まじです?俺こんなに食えないって・・。どんだけです?」

「今日の昼は、バーベキューしようと思って色々と食材を持ってきたのだ」

「それにしても多すぎでしょ?何人分あるんです?」

「とりあえず、使えそうなの突っ込んできたから・・・。」

「相変わらず、自由人ですよね・・・。」

「ん?なんか言った?さ、準備が出来たら出発するよ~」


 後部ドアを開けて荷物を積み込む。荷崩れしないように後部シートの足元に収める。現地に到着後、蓋を開けたら食材が、ごちゃまぜという大惨事だけは避けたい。荷物を収めて運転席に戻る。


「ナビ設定しますけど行先教えてもらえますか?」

「まずは、小田原に向かって走ってくれるかな?ワトソン君!」

「だから・・ワトソンじゃないっての、先輩ちゃんとシートベルト占めてくださいよ。」

「OK!では、出発進行!!」


 東名から小田原厚木道路で小田原にでて、国道1号線か・・。

「小田原からはどう行きます?」

「とりあえず根府川に・・根府川でお昼って感じでお願い。」

「ナビの設定・・根府川に直すか・・。」

 ナビの設定を根府川に・・といっても音声入力だからいうだけなんだけどね。


 ここで、昔の俺が顔を出す。(今の世の中凄いな・・あの頃は、こんなものが出来るなんて思いもしなかったよ)


「根府川だと国道135号線ですね」

「そうなのかな?根府川の駅の手前で二股にわかれるんだけど、、それを左側に進むと目的地につくよ、真鶴道路だっけかな?途中から有料になるんだよ、白糸川っていう小さい川があるんだけど、そこの桜が奇麗なんだ。」

「知らない人も多いんだけどってか・・・ここに釈迦堂があるんだけどね。1923年の関東大震災時・・・てか、関東大震災から100年も経つんだね。その時この付近一帯が山津波で埋没したそうだよ。」


「関東大震災って聞くと東京でのイメージがあるけど。そうなんですね」


「で、後で掘り出したら無傷だったので、お堂の形にしてまつられたらしい。そんな経緯を持つ釈迦堂だから現代のパワースポットになってる・・らしい。」

「凄いなと思ってたけど、なんでかな?パワースポットって聞いたとたんに胡散臭く感じちゃいました。俺ってきっと罰当たりなんですね。」

 真面目な顔で燿が、半笑いしながらそんな事をいった。


 霊験あらたかな場所も・・パワースポットというとなんか軽く感じてしまうのはなぜだろう?

 人間の欲が、集まってくるからかもしれない。


【霊験あらたか】神仏による効験が明らかに表れるさま。 神仏が著しく感応するさま。

 なのだから、如来堂があるここは、正にそんな場所に違いないのだけれど・・多分、人間の欲が絡んでしまうことによって違う場所になってしまうのかも知れない。心洗われるべき場所なのに欲にまみれた人々が汚していくのかも知れない。

「どうなんだろうね?」

 欠伸を噛み殺しながら返事をした。


「先輩、眠いなら寝てていいですよ。近くになったら声かけますから」

「クラシックなんてかけてるから眠気を誘うんだよ」

「だって、先輩Jーpopとか苦手じゃないですか」

 今日は、ワーグナーだからそんなに眠気を誘うとはおもえないんだけど。

「とりあえず、寝ちゃってください。小田原着いたら起こします。」

「じゃ、お言葉に甘えて・・海が見たいから海が見えるようになったら起こしてね。」


 素直に言うところを見ると結構我慢してたのかも知れない。ほんと・・そんなところは意地っ張りなんだよね。昔から変わらない。


 雫が、うとうとし始めてすぐに。

 さっきまで降り出しそうだった雨雲が、視界からどんどんと離れていって薄っすらと晴れ間が見えてきた。

「やっぱり、ドライブは晴れてないと気持ちよくないよね~」

 助手席で寝息を立てる雫をみる。彼女に悪気はないのだけれど。雨女だから仕方がない。


 久しぶりの車の運転だから雨よりは、晴の方がいい。運転技術に問題は無いけど。。、悪天候はいやだよね。しかも今日は、海沿いの道路だし。・・・海も荒れるんだろうか?

 ちょっと心配になる。

 東京を出る時の天気予報が、余りよくなかったせいか、意外に車の数が少ない。春真っ盛りの週末ならこんな空いているなんて、逆についているかも知れない。

 大きな渋滞に巻き込まれることも無く小田原を超えてすでに早川の手前までやってきた。


「先輩!もうすぐ早川に着きますよ・・美味しい蒲鉾買うんじゃなかったです?先輩起きてください。」

「うーん、え??蒲鉾??食べます!食べます!!」


「・・・・ぷはっ・・先輩・・必死すぎ・・。」

 笑いを我慢しきれずに噴き出してしまう。

「・・てへっ・・・お恥ずかしい・・。」


 窓の外が、海沿いの道路に変わっているのをみて

「私、随分と寝ちゃったんだね・・・運転お疲れ様、ありがとね」

 運転していた燿に雫が、労いの言葉をかける。


「意外に道路も思ってた程混んでなくて、割と快適なドライブでしたよ。」

 眩いばかりの笑顔で答える。

「蒲鉾は、釈迦堂のドライブインでも買えるからそこで買うよ。」

「帰りに買えば良いんじゃないですか?」

「あとじゃダメなの・・バーベキューで焼き蒲鉾食べるのよ・・・チーズいり蒲鉾を網の上で焼くとね。表面がカリカリで溶けたチーズがジュワッと・・・ビールに最高なのよ」

「俺・・・車の運転があるんですけど・・。」

 恨めし気に雫を睨んでそう告げる。


「あ、、、運転忘れてた~・・・大丈夫!代行呼んじゃえばいいよ。」

 にっこりと笑い、雫が、最高の笑顔で何事もないという。

「ところで荷物の中にビールとかも入ってたんですか?」

「そりゃ当然でしょうバーベキューにアルコール抜きなんてどんな拷問?」

 青い顔で雫が、身を震わせながら大げさに言う。


「確かにそうだ!!」

 そう答えて、二人で顔を見合わせて盛大に笑った。

興味のある方。面白いと思った人はぽちっと!

宜しくお願いします。

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