ふざけてんのか
ブラックアウトしていた視界が少しずつ戻ってくる。
真っ暗闇の中待たされてた謎の時間がようやく終わるのか。実は夢でこのまま目覚めるとか期待してたけど、俺の視界には森が入ってきた。
「やっぱり夢じゃないよなぁ。てかここどこだよ。森の中に転生させるとか何考えてやがるんだ。これから俺はどうすればいいんだ」
ぼやいたところで何も変わらないことはわかっているが文句の一つでも言っておかないと正気を保っていられそうもない。本当にこれから先俺はどうやって生きていけばいいんだよ。ハードモードで挑戦しようとか思っていたさっきまでの俺を50回はぶん殴らないと気が収まらないな。
「そうだ、スキルが一つもらえるって言う話だったよな……ちょっと待てよ、スキルってどうやって使うんだ? 世界に着いてからのお楽しみとか言ってたけど、そもそも使い方がわからないじゃねぇか。いきなり詰んだ臭いぞこれ」
あの言い方だったら無意識のうちにスキルの使い方を理解しているとかそういう感じじゃないのかよ。全然心当たりもないぞ。マジでやばいってハードモード超えてるって。こういうことをちゃんと質問しとかないといけなかったのか。
「一旦落ち着こう。深呼吸だ。小学生の頃にやらされていたラジオ体操を思い出すんだ。そう、これで気持ちを整えろ」
俺は森林浴をしているような気分で深呼吸をした。
「すうぅぅーーー……はぁぁーーー……すうぅぅーーー……はぁぁーーー」
よし、これでリセットされた。今の俺は最も落ち着いた状態に持っていけているはずだ。この通り心拍も正常だ。
状況を整理しよう。ここは異世界でモンスターがいる。ここまではオッケーだ、事前に聞かされてたからな。それで、今俺がいる場所はいかにもモンスターと遭遇しそうな森の中……しかもスキルとやらの使い方もわからない。おまけにここからどこへいけばいいかもわからない……うん、詰んでるな。もういっそ諦めちまうか。いや、どうせ死ぬんなら最後まで足掻かないとダメだよな。ゲームでも詰みだと思ってもそのまま諦めるなんてことはしない、するはずがない。俺のゲーマー魂舐めんなよ。こんなの俺がやってきた数々のゲームの難易度に比べればお茶の子さいさいだ。
まずは自分の格好を確認する。これは俺がゲームをしていた時の恰好のままだな。動きやすい上下のジャージだ。ポケットとかに何か入っているかと確認してみたが、お菓子の一つすら入っていなかった。まあ、期待してないから別に構わない。
次にゲームと同じようにオプションのようなものが開けないか試してみる。
「オプション画面開け。オプション画面出てこい。オプション画面オープン。開けゴマぁぁーーー!!」
すべてが空振りに終わった。これはまだ試す価値があるはずだ。オプションという言葉がキーになっていない可能性がある。そうだ、スキルなんだからスキルがキーの言葉になるんじゃないか?
「スキル画面開け。スキル画面出てこい。スキル画面オープン」
またもやすべてが空振りに終わった。ふざけんなよ。これでも何も出てこないのかよ、それじゃあ、自分のスキルはどうやって確認するって言うんだ。この世界の人間はすべてスキルを持ってるんだろ? どうなってるんだマジで。絶対に何かスキルを確認する方法があるはずなんだ。一体どうやればいいんだよ。
「スキル、スキル、スキルオープン!!」
ピコンと俺の目の前に半透明の立体映像のような板が表示された。
キタァァァーーー!!! これだ、絶対これだろ。あの爺さんスキルの確認方法ぐらいは聞かれなくても教えておいてくれよ。俺が適当に叫んでなかったら自分のスキルを知る前にゲームオーバーだったぞ。なんのためのスキルだよ。危険な世界へ対応するためのスキルがなんの役にも立ってないじゃねぇか。
「ふむふむ、なになに。名前とかもこれにのってるのか」
俺の名前、トレイが表示されている。本来は感じなのだが、なぜかカタカナ表記になっているな。これもこっちの世界に合わせているのだろうか。いやいや、俺の名前なんて今はどうだっていいんだよ。なんか苗字が消えてるがそれもどうでもいいことだ。
「えーとスキルはっと、ジャッジメントレイ? なんだそれ。説明はないな……えぇぇぇーーー!!!」
スキルの名前だけわかったところでスキルに関する説明は何ものってないのよ。このスキル表示の板になんの価値があるんだ。
「落ち着け俺。まだだ、一回使ってみれば何かわかるだろう。まずはこの画面を閉じよう」
俺が閉じようと言った瞬間に立体映像のような板は綺麗に消えた。
閉じるときは簡単だな。開くときもこれくらい融通利かせてくれよ。さっきの感じだったらスキルオープンって言えば開くんだろうな。
ピコンとまたもや画面が表示された。
「なんだこれ、心の中で言っても開くのかよ。便利だが今は開かなくてもいいんだって。うぜぇな。閉じろ」
また、画面が消える。一体俺は何をやっているんだこれ。
「はあ。気を取り直してスキルを使ってみるか。でもどうやって使えばいいんだ? まあ、スキル名を言ったらこう言うのは大体発動するよな? なんか技名っぽいし、ふう、ジャッジメントレイ!!」
俺がスキル名をそこそこ大きい声で唱えると、なんとなく前に出していた右手から神々しい光が放たれた。そして消えた。
「は?」




