そりゃないって
「俺のゴリラエイムを見やがれ!! オラオラオラァ!!」
クラスではド陰キャの俺もゲームの世界では陽キャへ変身。無駄に時間を費やしてきたゲームの中だけが俺の心のよりどころだ。縦横無尽にエリアを駆け、敵を蹂躙していく。この瞬間がたまらなく楽しいのだ。
「そんなところに隠れたって無駄だぁ!! オラオラオラァ!!」
最後の敵が隠れている場所に突っ込みとどめをさす。これで俺の勝ちだ。
「よっしゃー!! 見たかぁーー!! 俺は無敵だーー!!」
自分の部屋で勝利の雄たけびをあげる。もちろん、ボイスチャットなどはオフにしているので完全に一人で盛り上がっているだけだ。いくら俺と言えども、流石に知らない人としゃべるのは難しい。それも顔も見えない会ったこともないゲームの向こうの人と何てハードルがエベレストのごとく高い。
「はあ、今回も俺を唸らせるような奴は現れなかったな。ささ、次に行くとするか」
マッチを終え、俺は再度マッチへ接続を試みる。
もうかれこれ10時間はぶっ通しでゲームにかじりついている。今日が土曜で明日も休みだからとは言え、夜から朝までやり続けるのはかなり体力的に応えるな。俺も少し集中力が落ちてきたように感じる。
「これが終わったら一回寝て、また後でやりますか」
ソロでゲームをする素晴らしいところは時間に縛られないということだ。自分の体力が続く限り、時間の許す限りゲームにのめりこむことができる。プラスに考えよう。これが、もし友達とやっていたとする。そうすると、友達が眠たいからもうやめようと言った時点でゲームは終了だ。それに集合時間だって完璧に守られるとは限らない。自分はゲーム機の前で待機しているのに、誰も来ないなんてこともあり得るのだ。だから、俺はあえて一人でゲームをするソロプレイヤーなのだ。
「よっし、今回も俺の勝ちだ。ふあ、流石に眠いな。まだ時間はたっぷりある。ちょっとだけ仮眠を取ってまたゲーム再開だ」
一区切り着いたところで、仮眠を取るためにベットへと移動する。
ボフンッ。
ベットへダイブし、そのまま寝転がる。
ああ、この瞬間も最高なんだ。疲れが一気に吹き飛ぶようだ。集中モードからベットにダイブすることで強制的にリラックスモードへと持っていく。脳が疲労を訴え、強烈な睡魔が襲って来る。抗うことなく飲み込まれれば俺はこのまま夢の世界へゴートゥーヘブンだ。
「少年、起きるのじゃ。これ、早く起きぬか」
あれ? 誰かの声が聞こえるような……おかしいな、俺は一人暮らしのはずなのに……。
まだ覚醒仕切っていない意識の中、ぼんやりとそんなことを考える。
「少し目が開きかかってるではないか。早く起きんかい。わしは暇じゃないんじゃぞ」
「ううぅ……爺さん誰だ?」
俺が目を開けると、視界に入ったのは白髪の爺さんだった。
なんで爺さんが俺の家にいるんだ? 最近会っていないが俺のじいちゃんはもっとこうイケてる感じだったはずだ。断じてこのパッとしない爺さんではない。
「わしは神じゃ。少年の世界を管理しておる存在じゃ」
「おお、神様だったのか。俺もその境地まで至ったということか。で? 爺さんは俺に何の用だ? 早く起きてゲームがしたいんだけど」
「それはもう不可能じゃな。少年はついさっき死んだのじゃから」
夢に現れた自称神の爺さんから俺は死んだという報告を受けた。
「ゲームができないだと……そんなことが許されるか!! 大体ベットで寝ていた俺がどうやって死ぬって言うんだよ。説明してくれよ爺さん」
「少年には知る権利があるじゃろう。よかろう、少年がゲームを終えて寝た後に、すんでいたマンションで火災が起きたのじゃ。もちろん住民は大パニックじゃ。しかし、疲れ切っていた少年はその騒ぎに気が付くことなく爆睡。そして、逃げ遅れて火に飲まれたというわけじゃ」
「はぁ!? どこの馬鹿が火事なんて起こしたんだよ。ふざけんなよ。俺のゲームのセーブデータはどうなるっているんだ!! 早く俺を生き返らせろ!! まだデータは間に合うはずだ!!」
「それは無理な相談じゃな。一度死んでしまったものを復活させることなどいくらわしでも出来はせんのじゃ。しかし、この法則の抜け道として新たな世界へ新たな命として転生することが可能なのじゃ。どうじゃ? 興味が湧いてこぬか?」
違う世界へ転生だと、そこに俺のゲームはあるのか? いやあるわけがない。そんな世界への興味なんて微塵も湧かない。
「断る。俺はゲームがしたいだけだ。転生なんてしたところで意味がない」
「そうか、では少年は死んで自我が消滅したのち、まったく別の人間として輪廻転生することになるがよいかの?」
「ちょっと待ってくれ。話を聞こうじゃないか」
俺が消滅するって言うなら話は別だ。俺が俺でなければゲームができない以前の問題だ。そんなことは許されないのだ。
「それでは、説明に入るとするかの。一度しか言わないからちゃんと聞いておくんじゃぞ」
「ああ、爺さん頼む」




