色
悠人は地下から上がって周りを見渡した。そこに広がっていた景色は現実世界では死ぬまでにみることのないとても美しい景色だった。床にはレッドカーペットが敷かれ、汚れが一才ない真っ白な壁。騎士の鎧が何個も飾られてあり、まるで本に描いたような城。
「地下に連れてかれた時は、目を隠されてて何も見えなかったけど、王国の宮殿。すげぇ」
「宮殿の中を見るのは初めてか。最低でも1ヶ月はここに滞在するから、慣れてくるさ」
「そうだ。どこに向かってるんですか?」
「指導を受けるのに剣とか必要だろ?それを取りに行く。そうだ、ユウトは何色なんだ?」
「色?なんですか?それ」
「色を知らないか。珍しいな。色ってのは人間全てが持っている力の根源を表すものだ。色には下級色。上級色。この2つを合わせて9色存在する」
「下級色、上級色?この2つに分けられてる理由はなんですか?色によって身分が変わるとか?そもそも何色があるんですか?
「色で身分が分けられるとかは特にない。珍しさだな。下級色は比較的に持っている人間が多い。上級色は少ない。ただそれだけだ。剣を取りに行く前に、ユウトの色を判別しておこう。行き先を変える。そこに向かう途中に色についてもっと話そう」
「了解しました。お願いします」
「まずは下級色だな。合計で5色。緑、赤、青、黄、橙だな。色にはそれぞれ持てる力がある。緑は風、赤は炎、青は水、黄は雷、橙は土だな。次に上級色。紫、黒、金、白の4色だ。紫が毒、黒は闇、金は光、白は氷。この合計で9色存在する。だが例外もある。通常人間は1人1色だが、稀に複数の色を持つものがいたら、さっき言った話を矛盾してしまうが…いやこれはいいか」
ゲームでいう属性を色として表してるのか。複数持つ者は副属性的な感じだろう。矛盾…色を持たない人間がいるのかな。
「ちなみにビオラさんは何色なんですか?後メイスさんも」
「私は青だな。青の力は水。こんな風に」
そう言って親指と中指を擦り合わせ、水の塊を作り出した。
「おお!すげえ!」
「本当に見たことないんだな。これは技の中でも初歩的な初歩。空間に自分の色の力を出すだけだよ。ユウトも色を理解すればできるよ」
「まじか…!できるようになるか!!」
「そんなに嬉しいか。ちなみにメイスは金と白の2色持ちだ。2色持ちも大体は下級色が2色のパターンか下級色、上級色で2色のどちらかが多いのだが、その中でも珍しい上級色2色持ちが剣聖カルラ・メイスだよ」
「剣聖って言う二つ名があるだけのことはあるってことか」
そんな話をしてると目の前に悠人の身長を2倍以上にした扉の前に着いた。
「ここだ、ここで今から色を判別する。私だ。開けてくれ」
「ビオラ様!了解いたしました!今すぐ開けさせていただきます」
「うん、ありがとう。着いてこい」
「あ、はい」
中に入るとそこにはとてつもなく大きい水晶玉とそれを守るように分厚いガラスがあった。
「で、でけぇ。こんなの見たことねえ」
「私も久しぶりに来たが、やはり迫力があるな。ユウトこっちだ」
悠人を呼ぶとビオラは指を刺した。
「これは?」
「ここに手をかざせ。目の前にある水晶玉が自分の持つ色に変わる。複数持つなら色が入れ替わる。私の場合は青だから。こんな感じになる」
ビオラが手をかざすと、透明だった水晶玉が青色に変化する。
「すげぇ…。どういう原理なんだ…?」
「私もわかっていない。これは先代国王の時代からあるらしい。その時代に生きていた腕が立つ魔法使いが作ったらしい。そんなことより手をかざせ」
「了解です」
そう言って悠人は手をかざす。しかし、透明から何も変わらない。
「あれ?壊れた?」
「これもまた運命ということか」
「え?」
「さっき矛盾してしまうで話をやめてしまったな」
「あー。はい」
「色を持たない人間も存在する。持たないというよりかは何色にも"染まっていない"が正しい」
「と、言うと?」
「あの9色以外に無色というものが存在する」
「無色…?」
「色は本来は生まれた時に必ずしも持つものである。しかし何色にも染まれず生まれてしまうものが今までにいた。それが初代剣聖と初代初代魔王、そしてもう1人、名前はわかっていないが3人存在した。ユウト君で4人目だ。そして4人のうち3人は水晶玉の持ち主であると。これを偶然と言えるか?水晶玉はもしかしたら、無色を選んでいるのかもしれないな。無色についてはこう聞いている。"無色は周りに影響される。何色にも染まっていないが故に、何色にでも染まれる"とな」
「つまり、何色でもないから何色にでもなれる。その時の状況に応じて力の源を作り出せる。ということでしょうか」
「私もこの目で実際に見たわけではないから断言はできないが、おそらくそうだろう。無色。面白い。ユウトの色が判別したんだ、剣を渡そう」
「あれ?剣って取りに行くんじゃ」
「この部屋から剣を取り出せる。"時空の狭間よ。剣を取り出せ"」
そう唱えると空間に歪みが生まれ、そこから剣が出てきた。