三話 白銀の世界
ううっ…。
体中が痛い。
そして、凍えるような寒さに襲われる。
ううっ…。
一体何があったんだ…。
俺は、今できる最大限に頭を回転させる。
そうだ!
俺たちは雪の家にいて、急に停電が起こって、気を失ったんだ。
目が覚めてから二分ほど経って、ようやくぼんやりしていた俺の視界がはっきりしてきた。
幸い、怪我らしい怪我はないようだが…。
…
……
………
言葉が出なかった。
俺たちがいるのは、だだっ広い雪原の上だった。
目の前には、雪をかぶった、巨大で立派な山脈。
背後は、スキー場のような坂がある。
皆も、既に、目が覚めているようだったが、俺と同じだ。
絶望も希望もない。
ただ、今起こっていることが、俺たちの脳のキャパでは、理解できないのだ。
完全に思考が停止している。
昨日までは四月だったはずだ。
その証拠に、俺たちは全員春らしい服装である。
誰一人、マフラーやコートなど、冬を連想させるアイテムを身に着けていない。
春から飲まず食わずで、冬まで命が続くはずがない。
そうだ。
日付を確認しないと…。
ポケットから携帯を取り出す。
…反応なし…
電源切れだ。
まぁ、冷静に考えて何ヶ月もバッテリーがもつはずがない。
だが、動かないと、このままあっちの世界へ逝ってしまう。
ここは真冬の雪山だ。
しかも、俺たちは薄着。
俺は、皆に呼びかけた。
「おーい!
このままじっとしていても仕方がない。
とりあえず、この近くに山小屋なんかがないか、調べないと。
怪我しているヤツはいないか?」
皆、首を降る。
一応皆に確認したが、誰も食料を持っていなかった。
携帯も使えない。
俺たちは、坂を下ることにした。
目の前の巨大な山は、こんな軽装備じゃあ登るのは危険すぎる。
体力もできるだけ、温存したい。
出発しようとした矢先…。
「いてっ!」
ローズが盛大にひっくり返った。
おいおい…。
早速、先行き不安じゃねぇか。
「だ、大丈夫か??」
「う、うん…。
でもなんか、おっきい固いものに躓いた…」
「どういうことだ??」
辺りは膝下まで埋まるくらいの積雪量なのだが、そこに何かが埋まっていたのかもしれない。
体力はできるだけ温存しておきたかったが、何か使えるものかもしれないので、男二人で掘り起こすことにした。
この雪は踏み固められていない新雪で、掘るのは実に容易だった。
十センチほど掘ると、何か箱のような固いものにあたった。
周りから攻める。
「ギター!!!」
箱の全貌が露わになった瞬間、雪がそう叫んだ。
「私の、お気に入りのギターだよ」
開けてみると、見覚えのある赤いギターが姿を現した。
そうだ、あのときのライブの。
でもなんで、こんなところに…。
雪は、何もかも忘れたように、ギターを大事そうにナデナデしている。
さらに、それだけではなかったんだ。
近くに、もう一つギターが、ベースも一つ埋まっていた。
どちらも、雪のものらしい。
謎は一つ増えたが、とりあえず担いで持っていくことにした。
俺たちは、寒さと戦いながらも、なんとか坂を降りきった。
坂の下は、結構開けていて、積雪量も地面から数センチといったところだ。
坂を背にして、右手には森林。
正面から左手にかけて平坦な道が続いている。
進行方向を決めるのを兼ねて、少し休憩することにした。
「休憩しよう。
雪を体温で溶かして飲むんだ。
水分は取っておいた方がいい」
ゴォォ… ゴォォ…
森の方から、何かが近づいてくる。
ソリだ!!!!
人が乗っている!!!!