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BITTER BETTER SONGS  作者: 糸舞ランタ
第1章 笑えねぇ冗談
3/5

二話 結成

 「バンドやろうぜ」


 風谷さんは、非常に困惑した表情をした。

 まぁ、今日出会ったばかりのヤツにこんなこと言われたんだから、無理もないか。

 

 というか、俺も困惑している。

 ただ、次々心中とは無関係な、無責任な言葉が出て来るのだ。

 

 「俺は、お前の歌声に惚れた!

 俺自身も、何か楽器ができるわけじゃない。

 メンバーなんて何も決めてない。

 それも、今、この場所でお前の歌声に惚れたってことなんだよ。

 お前の歌声は、人を感動させて、行動まで起こさせることができる…

 そういうパワーがあるんだ! 」


 あーあ、熱くなっちゃってるし…。

 こりゃぁ、後々顔赤くするヤツだ。

 

 ただ、なんで俺が見えない何かに、突き動かされるようにこんなこと言ったのかはわかった。

 「見えない何か」の正体が。

 俺の脳みそは、彼女の歌声によって麻痺したみたいだな。


 まぁ、このもう一人の、心の中の俺が言ったように、バンドやってみるのも悪くねぇかな。

 また、目立たないど平凡な高校生ってのも、つまらない。

 

 そんな、一方的な妄想を俺の脳内で展開していると、ようやく彼女が口を開いた。


 「そこまで、熱い気持ちでやってくれるならいいよぉー」


 おい、なんか返答軽いぞ…。

 

 こういう天真爛漫な性格なのか??

 それともただのアホなのか????

 さっきとは違う意味で見た目とのギャップがすごい…。

 あんだけ熱くなった俺が報われねぇ。


 


 そして、翌日から、俺と雪のメンバー召集が始まった。


 雪ってのは、風谷さんの下の名前だ。

 なぜか、雪が欧米思考で、「バンドメンバー同士なら、下の名前で呼びあうのは当然ことだ」と言い出したので、雪、湊太の関係になった。

 別に嫌ではないんだかな…。

 

 召集方法が、またあいつらしく、学校でとにかく暇そうにしてるヤツに声かけるってだけだ。

 楽器できるできないは、どうやら全く考慮されていない。

 時には、全く乗り気でないヤツまで、強引に連れて行こうともした。




 

 なんだかんだで、俺の熱い告白から約一週間。

 俺と雪を合わせて五人集まった。

 男二人、女三人。

 バランスは悪くねぇか…。


 寄せ集めで、お互いのこともよく知らないってことで、自己紹介から始めることにした。


 「西国 湊太。

 音楽経験はない。

 んまぁ、よろ」


 「風谷 雪でーす。

 ギターできまーす

 よろぴく!」

 

 相変わらず軽いヤツだ。


 「坂之下さかのした うたです。

 何もできません」

 

 意外と可愛い。

 タイプではないが。


 「山桜やまざくら ローズです。

 何もデキませーん」


 ハーフらしいが、名字がこの上なく日本を強調しているせいで、そこら辺の日本人より日本人らしい。

 さらに、もう一つ言うなら、チェリーなのか薔薇ローズなのか、そこら辺をはっきりしてほしいものだ。

 

 「影山かげやま 宙音あおとです。

 俺も何もできない」



 まぁ、ともかく誰も何もできないってことだ。

 全員、やる気だけはあるというらしいが、それだけが救いなのである。


 気まずい沈黙が数秒続いたあと、雪が口を開いた。

 

 「みんな、家に楽器あるからさー、このまま家に来てよ!

 今日は日曜日だし誰もいないよ!!」


 「それは助かる。

 楽器購入費用もろもろ浮くからな」


 

 

 集まったファミレスから歩いて十分。

 俺たちは、雪がとてつもなく広い豪邸の前で足を止めたことに、あ然とした。

 言葉が出ないとは、おそらくこういうことなのだろう。


 本当によくわからないヤツだ。

 


 メイドさんたちに客室へ案内され、俺たちは戸惑いながらも、ソファーに腰掛けた。

 

 メイドさんたちが、お茶を入れてくれ、俺たちは天国をみているようだった。

 いや、正確にはメイドさんを見て喜んでいるのは、男子約二名だけな気が…。

 


 その時…



 パチッ!!!! ゴォォ…



 何か大きな音が響いた。

 



 何かを考えるスキもないまま、次の瞬間、俺の視界はブラックアウト…。

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