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BITTER BETTER SONGS  作者: 糸舞ランタ
第1章 笑えねぇ冗談
2/5

一話 出会い

 春。

 とは思えない暑さが続くなか、入学式が行われた。

 

 あぁ…。

 憂鬱で仕方ない。

 

 女の子にはモテない、友達はデキない、名前を覚えられない。

 中学時代はこのないないトリオで、まあ悲惨であった。


 高校に入学したところで、俺の人格が急変するはずもないし、周りのヤツらの価値観が、急に俺を必要としだすわけもない。

 つまり、中学の二の舞を演じることになる可能性がとてつもなく高いということである。


 気分がアガらない中、担任が自分の名前を黒板に殴り書きしたり、皆「よろしくお願いします」しか言わない(あ、だいたい一人か二人くらいは変則的なヤツがいる)自己紹介を済まし、今日は解散となった。


 このまま、家に帰るのも淡白すぎるなと思い、俺は駅前のCDショップにでも寄って行くことにした。

 本当のところは、皆が早々に遊びに行く約束を取り付け、教室から出て行ったことに対するボッチなりの対抗心だったりする。

 

 ん? 


 ショップの前に人だかりができている。

 あーね。

 どこかの度胸のある素人シンガーが路上ライブをやっているようだ。


 ショップ前は人通りも多いからか、シンガーの間で定番スポットになっている。

 週五くらいの頻度で誰かが歌っている。


 ただ、今日は何か違った。

 いつもは、「素人の声だな」って見向きもしないのに、今日は歌声に引き込まれるような感覚がする。


 ちょっと気になったので、いつも無視する人だかりに手を突っ込んで、割り込む。

 

 すると、さらに大きな驚きに襲われた。

 歌っていたのは、同じクラスになった、風谷さんだった。


 たまたま、席が隣同士で、少しだけ会話した記憶がある。

 それにしても見た目とのギャップに驚きだ。

 さっきは、静かで落ち着いた感じの子だと思ったが、目の前ではギターを手にして、ロック調の歌を歌っている。

 これは、これで背伸びしてるようにも見えなくて、身の丈に合っている。


 ちょうど、アンコール曲を歌っている最中だというので、終わるのを待って、話しかけてみることにした。

 とにかく、とてつもなく歌が上手い。

 激しい歌を歌っているためか、気づきにくいが、ものすごく声が澄んでいる。

 こういうのが、路上でスカウトを受けるんだろうなとまで思う。

 

 彼女が奏でる最後の音の余韻が雑踏に消えたとき、歓声と拍手喝采。

 「チップを入れろ」と図々しく、彼女を取り囲む円のセンターに居座る箱も、次々に投げ込まれる硬貨や紙幣に、今日ばかりは、自己主張をしていない。


 五分くらいすると人だかりも解消され、やっと俺は彼女にアプローチできた。


 「あれ?? 確か、西国くん??」


 俺は、名前を覚えてくれているという信じがたい事実に困惑しながらも答える。


 「お、おう。

 今の演奏凄かった。

 感動モノだった」


 彼女は少々驚いた様子だったが、嬉しそうに微笑んで、「ありがとう」と照れている。

 

 やめてくれー!!

 モテないピュアな男子は、その笑顔で勘違いしてしまうんだよ!!


 そして、その三秒後くらい…。

 俺自身でも驚いた告白をした…。

 

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