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狂気と誤算

リッジの陣を出たジェラスが森の中を

足早に通り抜けようとする。

彼が目指したのは、二キロ程離れた所にある真正勇者協会の陣だ。

自分の命令を聞かない無能な者たちに変わって

協会の勇者に門番を倒させようと思っていた。

森の中を急ぎながら、彼の中では、自分の力を認めない者たちへの怒りが

沸き上がり、それは次第にリッジたちへの憎悪へと変わっていく。

そしてさらには、アブソルートたちに対してジェラスの指示に

従うように。

そう命令しなかったインシディが悪いのだ、とも思い始めていた。

そんな感情に支配されながら、ようやく協会の陣営に到着する。

陣に入ったジェラスは、その感情を、そこにいた者たちにぶつけた。

「ここにいる全員は、今すぐ魔王城の攻略を行え!」

このいきなりの発言に、その場にいた者たちが反発する

その場の誰一人、命令に従うのもはいなかった。

それを見たジェラスは、彼らに対して役立たず、や

屑、などと数々の暴言を吐き、その場にあった物に当たり散らした。

あまりの乱心ぶりに取り押さえられ、陣から引きずり出されようとする。

その際に誰かが言った、じゃあ、お前が行けよ。

という言葉を聞いたジェラスは、急におとなしくなり

皆の制止を振り切って、一人、魔王城へと向かう。

異常を感じた協会の勇者は、この事をリッジたちの陣営に報告した。

これを受けてエンビーとボーンリスが城へ向かう。

だが、エンビーが城門に着いた時

既にジェラスは門番と対峙しており

驚いたことに、門番がジェラスを城内へと招き入れられる所だった。


城内でジェラスを迎えたのは、ナザードの管理者ファウン一人だ。

トーレスの管理者ソイルは、興味が無いのか、姿が見えない。

「ようこそ、勇者よ。

君は他の勇者とは違う、深い負の感情に包まれているようだ。

そんな君に私の力を与えたら、どうなるんだろう?

実に興味深いと思わないか?」

そんなファウンの語り掛けにもさほど反応せず

ぼんやりと立っているジェラスだったが、彼の

中では感情が理性を食い尽くして暴走しようとしていた。

増大する負の感情。

そのジェラスに対してファウンが力を与える。

数秒、それでジェラスはファウンの支配下に入るはずだった。

しかし、ジェラスの狂気は貪欲に力を求め、ファウンの

力の源までも取り込もうとする。

その力に脅威を感じたファウンが、強制的に感覚を断ち切るが

その時既に力の六割を吸収されていた。

力の吸収を断ち切られたジェラスの瞳

その三分の一が紫色に染まっている。

「これが、神の力?

なるほど、これだけの力を持っていれば

この世界は思いのまま、というわけか」

そう言うと、残った力を取り込もうと、足を踏み出す。

ろころが、二歩ほど進んだ所でその歩みが止まる。

ファウンの側にソイルの姿が現れたからだ。

二人とも力が失われているとはいえ

二対一では分が悪い。

ここは一度引いて、個々に倒す方が良いだろう。

そう考えたジェラスは何処かに姿を消した。

残された二人の管理者は、互いに安堵の表情を示していた。

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